特定技能ドライバーが運送業界を変える|人手不足解消への実践ガイド
- 高橋 壮
- 2025年12月17日
- 読了時間: 10分

目次:
運送業界の人手不足は、もはや「将来の課題」ではなく「今そこにある危機」です。2024年4月に施行された時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」により、多くの運送事業者が深刻な輸送力不足に直面しています。
このような状況下で注目を集めているのが、特定技能制度を活用した外国人ドライバーの採用です。2024年3月、特定技能1号に「自動車運送業」が追加されたことで、運送業界にとって大きな転換期を迎えました。
本記事では、特定技能ドライバーの採用を検討している運送事業者の皆様に向けて、受け入れのメリットから具体的な要件、成功のポイントまでを詳しく解説します。
1.運送業界が直面する「2024年問題」の実態

急増する物流ニーズと減少する労働力
日本の物流業界は約29兆円の営業収益を誇る一大産業です。特にトラック運送事業だけで18兆円を超える市場規模となっています。

EC市場の急成長により宅配便の取扱個数は年々増加し、即日配達や時間指定配送など、サービスの多様化も進んでいます。
しかし、需要の拡大に反して、現場を支えるドライバーの確保は年々困難になっています。
ドライバー不足の3つの要因
課題 | 概要(簡潔) |
高齢化の進行 | ドライバーの平均年齢は高く、40〜50代が中心。若年層比率は全産業より著しく低い。 |
長時間労働のイメージ | 拘束時間の長さ・不規則勤務が敬遠される要因。2024年4月から年間960時間の上限規制が適用。 |
少子化による労働人口の減少 | 国内での採用競争がさらに激化。対策がなければ2030年に輸送力が34%低下する可能性。 |
2.なぜ今、特定技能ドライバーなのか

運送業界における外国人労働者の現状
現在、日本で働く外国人労働者は約230万人(2024年10月末時点)と過去最多を更新しています。しかし、運送業・郵便業で働く外国人労働者の割合はわずか3.3%に留まっています。

これは製造業(26%)や卸売業・小売業(13%)と比較すると極めて低い数字です。つまり、運送業界には外国人材を活用できる大きな余地があるということです。
特定技能「自動車運送業」の追加が意味すること
2024年3月の閣議決定により、特定技能1号に「自動車運送業分野」が追加されました。これにより、一定の条件を満たした外国人が、トラック運転者・バス運転者・タクシー運転者として正式に就労できるようになったのです。
この制度変更は、運送業界の慢性的な人手不足に対する国を挙げての対策であり、今後ますます特定技能ドライバーの活躍が期待されています。
3.特定技能ドライバー採用の3つのメリット

1. 即戦力として人手不足を直接解消できる
特定技能ドライバーは、単なる「労働力の補充」ではありません。
必要な試験に合格した技能を持つ人材
日本の交通ルールを理解し、日本語でのコミュニケーションが可能
最長5年間(特定技能2号への移行で更に長期も可能)の安定した雇用が実現
日本人ドライバーの採用が困難な中、特定技能制度を活用することで、計画的な人員配置が可能になります。
2. 若い労働力の確保で組織が活性化する
運送業界の大きな課題の一つが、ドライバーの高齢化です。特定技能で来日する外国人の多くは20代〜30代の若い世代。
体力的な負担が大きい業務にも対応可能
長期的なキャリア形成が期待できる
職場全体に活気が生まれる
若手人材の確保は、企業の将来を見据えた投資でもあります。
3. 企業の受け入れ体制整備が全体の働きやすさ向上につながる
特定技能ドライバーを受け入れるためには、企業側も受け入れ体制を整備する必要があります。
マニュアルの整備・可視化
研修プログラムの体系化
コミュニケーション環境の改善
労働環境の見直し
これらの取り組みは、外国人だけでなく日本人従業員にとっても働きやすい職場づくりにつながります。結果として、定着率の向上や採用力の強化にも寄与するのです。

4.特定技能ドライバーとして働くための要件

外国人が特定技能ドライバーとして日本で働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 在留資格「特定技能1号(自動車運送業)」の取得
特定技能1号の在留資格では、以下が認められています。
項目 | 内容 |
在留期間 | 1年、6ヶ月または4ヶ月ごとの更新(通算で最長5年) |
従事可能な業務 | トラック運送、バス運送、タクシー運送 |
家族の帯同 | 不可(特定技能2号では可能) |
転職 | 同一業種内であれば可能 |
2. 自動車運送業分野特定技能1号評価試験の合格
この試験では、運送ドライバーとして必要な知識と技能が問われます。
試験内容:
学科試験: 運行業務、荷役業務、安全衛生に関する知識
実技試験: 車両点検、安全運行、荷物の積み付けなどの実技能力
試験は図やイラストを用いた実践的な内容で、現場で即戦力となる能力が評価されます。
3. 日本の運転免許証の取得
特定技能ドライバーとして働くには、日本の第一種運転免許が必須です。
取得方法は2つ:
① 外国免許からの切り替え(外免切替)
母国で取得した免許を日本の免許に切り替える
条件: 外国免許取得後、その国に通算3ヶ月以上滞在していること
知識確認と技能確認を経て切り替え可能(国によって手続きが異なる)
② 日本で新規取得
日本の教習所で教習を受け、試験に合格
数ヶ月程度の期間が必要
4. 日本語能力の証明
安全な運行のためには、日本語でのコミュニケーション能力が不可欠です。
以下のいずれかが必要:
日本語能力試験N4以上に合格
国際交流基金日本語基礎テストに合格
N4レベルは「基本的な日本語を理解できる」レベルで、日常会話や簡単な指示の理解が可能です。
5.受け入れ企業に求められる支援体制

特定技能外国人を雇用する企業には、「特定技能所属機関」として一定の支援義務があります。
義務的支援の内容
項目 | 概要(簡潔) |
事前ガイダンスの提供 | 労働条件、日本での生活情報を事前に提供。 |
出入国時の送迎 | 空港送迎などの渡航支援。 |
住居確保・契約支援 | 住居手配、銀行口座、携帯契約など生活基盤のサポート。 |
生活オリエンテーション | 日本のルール・マナー、公共サービスの利用方法を説明。 |
日本語学習の機会提供 | 日本語教室の紹介や学習支援を実施。 |
相談・苦情への対応 | 母国語で相談できる体制を整備。 |
日本人との交流促進 | 地域イベント等を通じた交流機会を提供。 |
転職支援(契約終了時) | 次の就職先探しをサポート。 |
定期的な面談 | 3ヶ月に1回以上の面談を実施。 |
日本人と同等以上の報酬 | 同じ業務の日本人と同等以上の給与を保証。 |
6.特定技能ドライバー受け入れを成功させる5つのポイント

ポイント1: 多言語対応のマニュアル・教材を整備する
日本語能力N4レベルでは、複雑な業務マニュアルや専門用語の理解は難しい場合があります。
効果的な対応策:
重要な安全事項は母国語でも用意する
図解・写真・動画を活用したビジュアルマニュアルを作成
運行前点検のチェックリストなどは多言語化
簡潔でシンプルな日本語を使用(やさしい日本語)
ポイント2: 日本独自の交通ルール・マナーの研修を徹底する
外国と日本では、交通ルールや運転文化が大きく異なります。
研修で重点的に扱うべき内容:
左側通行のルール
日本特有の道路標識・標示
歩行者優先の徹底
狭い道路での対向車とのすれ違い
季節ごとの安全運転(雨天、雪道など)
荷物の積載ルールと車両制限
効果的な研修方法:
座学だけでなく実地研修を組み合わせる
ベテランドライバーとの同乗研修を実施
定期的な安全講習で知識を更新
ポイント3: バディ制度でコミュニケーションを円滑にする
言葉や文化の違いから、職場で孤立してしまう外国人労働者も少なくありません。
バディ制度の導入:
日本人の先輩ドライバーを担当バディとして配置
業務上の質問だけでなく、生活面の相談もしやすい関係を構築
定期的な1on1ミーティングで不安や悩みを早期にキャッチ
ポイント4: 文化・宗教への配慮を怠らない
外国人労働者の出身国によっては、宗教上の配慮が必要な場合があります。
配慮すべき点:
礼拝の時間・場所の確保(イスラム教など)
食事の制限への理解(ハラール、ベジタリアンなど)
宗教的な休日への対応
文化的な習慣の尊重
多様性を受け入れる姿勢が、外国人労働者の定着につながります。
ポイント5: 登録支援機関を活用して負担を軽減する
特定技能外国人の支援業務は多岐にわたり、中小企業にとっては大きな負担となる場合があります。
登録支援機関を活用するメリット:
支援業務を委託できる
多言語での対応が可能
専門的なノウハウを活用できる
本業に専念しながら適切な支援ができる
専門機関のサポートを受けることで、企業の負担を軽減しながら、外国人労働者にとって働きやすい環境を整えることができます。

7.特定技能ドライバー採用でよくある質問

Q1: 特定技能ドライバーの採用コストはどのくらいですか?
A: 採用コストは、人材紹介会社や登録支援機関の利用有無によって異なります。一般的には以下の費用が発生します。
紹介手数料: 年収の20〜30%程度(人材紹介を利用する場合)
登録支援機関への委託費: 月額2〜3万円程度
ビザ申請費用: 数万円
研修費用: 内容により変動
日本人ドライバーの採用が困難な現状を考えると、中長期的には十分に投資効果が見込めます。
Q2: 日本語がN4レベルで業務に支障はありませんか?
A: N4レベルは基本的な日常会話ができるレベルです。業務開始時は以下の工夫が有効です。
ビジュアルマニュアルの活用
OJTでの丁寧な指導
バディ制度の導入
継続的な日本語学習支援
多くの企業では、実務を通じて日本語能力が向上し、半年〜1年で業務上のコミュニケーションは問題なくなるケースが多いです。
Q3: 特定技能1号の5年後はどうなりますか?
A: 特定技能1号は最長5年間の在留が可能です。5年後の選択肢は以下の通りです。
特定技能2号への移行(制度が整備された場合)
在留期間の更新が可能(実質的な永住への道)
家族の帯同も可能に
帰国
母国でのキャリアアップ
他の在留資格への変更
条件を満たせば他の在留資格への変更も可能
長期的な人材確保を考える場合、特定技能2号の活用も視野に入れておくとよいでしょう。
8.まとめ: 特定技能ドライバーが切り拓く運送業界の未来

2024年問題により、運送業界の人手不足はさらに深刻化しています。従来の日本人採用だけでは、もはや必要な労働力を確保することは困難です。
特定技能制度を活用した外国人ドライバーの採用は、運送業界の未来を支える重要な選択肢です。
特定技能ドライバー採用のポイント
✓ 若くて意欲的な人材を中長期的に確保できる
✓ 必要な試験に合格した技能を持つ即戦力
✓ 受け入れ体制の整備が企業全体の働きやすさ向上につながる
✓ 登録支援機関の活用で企業の負担を軽減できる
✓ 多様性を受け入れることで組織が活性化する
もちろん、言葉や文化の違いから生じる課題もあります。しかし、適切な支援体制を整え、外国人労働者を「仲間」として受け入れる姿勢があれば、必ず成功します。
今こそ、特定技能ドライバーの採用を具体的に検討する時期です。
運送業界の未来を一緒に切り拓いていきませんか?








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