運送業界のドライバー不足は深刻化の一途|2025年問題と実践的な人手不足対策
- 高橋 壮
- 11月13日
- 読了時間: 11分

目次:
日本の物流を支える運送業界が、かつてない規模の人手不足に直面しています。トラックドライバーの有効求人倍率は2.76倍と全産業平均の2倍以上に達し、求人を出しても人が集まらない状況が続いています。この深刻な人手不足は、配送遅延や輸送コスト増加を引き起こし、中小企業の事業継続を脅かすまでになっています。
本記事では、運送業界のドライバー不足の実態から2025年問題の背景、そして今すぐ実践できる具体的な対策まで、網羅的に解説します。高卒採用の専門メディア「高卒採用ラボ」の記事も参照しながら、特定技能外国人ドライバーという新たな選択肢についてもご紹介します。
1.どれほど深刻?運送業の人手不足の現状
全日本トラック協会の調査によると、2024年2月のトラックドライバーの有効求人倍率は2.76倍と、全産業平均の1.28倍を大きく上回っています。これは、1人の求職者に対して2.76件の求人があるという状況を示しており、ドライバーの確保が極めて困難であることを物語っています。
特に大型トラックドライバーの不足は深刻です。長距離輸送や深夜・早朝の勤務など、労働条件の厳しさが背景にあると考えられます。このドライバー不足は、単に人材採用が難しいという問題にとどまりません。実際に以下のような深刻な影響が出ています。
ドライバー不足がもたらす具体的影響
項目 | 内容 |
有効求人倍率(トラックドライバー) | 2.76倍(2024年2月) |
全産業平均有効求人倍率 | 1.28倍(2024年2月) |
ドライバー不足の影響 | 配送遅延、輸送コスト増加、事業継続の困難化、消費者への影響(EC配送遅延、商品品薄など) |
荷物の配送遅延は、EC市場の拡大とも相まって消費者に直接的な影響を及ぼしています。また、輸送コストの増加は商品価格に転嫁され、経済活動全体に波及しています。中小の運送事業者の中には、ドライバー不足によって受注を断らざるを得ず、事業継続が困難になるケースも出てきています。
運送業界の人手不足についてより詳細なデータと分析は、高卒採用ラボの記事「ドライバー不足に悩む運送業…人手不足の背景と対策を解説」で詳しく紹介されています。
特定技能 運送業分野社員採用について
2.人手不足を加速させる2025年問題とは

「2025年問題」とは、人口減少や高齢化の進展により、様々な業界で深刻な人手不足が予想され、その結果サービスの質が低下することが懸念されている社会問題です。運送業界においても、この2025年問題は深刻な影響を与えると予想されており、ドライバー不足は喫緊の課題となっています。
運送業界における2025年問題には、主に3つの要因があります。
働き方改革による時間外労働の上限規制
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が設けられました。運送業界には猶予期間が設けられていましたが、2024年4月からはドライバーにも時間外労働の上限規制が適用されています。
これは労働者の健康確保とワークライフバランスの向上を目的としたものですが、運送業界にとっては大きな転換点となりました。これまで長時間労働で対応してきた業務体制の見直しを迫られ、業務の効率化やドライバーの増員が不可欠となっています。しかし、現状ではドライバー不足が深刻化しており、規制に対応できる企業は限られているのが実情です。
ベテランドライバーの引退による技術継承の課題
運送業界は高齢化が進んでおり、ベテランドライバーの引退が相次いでいます。長年の経験で培われた安全運転の技術や、効率的な配送ルートの知識、顧客との信頼関係など、ベテランドライバーが持つ無形の資産は計り知れません。
しかし、若手ドライバーの不足により、こうした経験や技術の継承が困難になっています。また、高齢ドライバーの健康管理や安全運転支援システムの導入など、安全対策の強化も重要な課題となっています。
若者の運送業界離れが止まらない
若者の運送業界への就職離れは深刻な問題です。「長時間労働」「低賃金」「きつい仕事」といったネガティブなイメージが根強く、現代の若年層は運送業界を敬遠する傾向にあります。
待遇改善や労働環境の改善が急務であることはもちろん、業界全体でイメージアップを図る必要があります。例えば、SNSなどを活用した情報発信や、運送業界の魅力を伝えるイベントの開催などが有効です。若者に選ばれる業界になるために、業界全体で魅力向上に取り組む必要があります。
2025年問題が運送業界に与える影響について、さらに掘り下げた解説は高卒採用ラボの記事をご覧ください。
3.今すぐ実践できる運送業の人手不足対策

では、具体的にどのような対策を講じれば、ドライバー不足を解消できるのでしょうか。ここでは、今すぐ実践できる3つの施策をご紹介します。
賃金体系の見直しで人材を引きつける
ドライバーの労働に見合った適切な賃金体系を構築することは、人材確保の第一歩です。長時間労働や休日出勤に対する適切な手当を含め、業界全体の賃金水準を引き上げる必要があります。
成果に応じたインセンティブ制度の導入も、モチベーション向上に繋がります。例えば、以下のような制度が考えられます。
安全運転報奨金:無事故・無違反を達成したドライバーへの報奨
効率的配送ルート提案への報酬:燃費向上や時間短縮に貢献した提案への報酬
顧客満足度に応じたボーナス:配送先からの高評価に対する報酬
また、賞与や昇給制度を明確化し、将来的なキャリアパスを示すことも重要です。「この会社で働き続ければ、こんな未来が待っている」という具体的なビジョンを示すことで、長期的な定着率向上につながります。
福利厚生の充実と労働時間短縮でワークライフバランスを実現
魅力的な福利厚生は、求職者にとって大きな決め手となります。以下のような福利厚生を充実させることで、従業員の満足度を高めることができます。
健康診断の充実:年1回の法定健診に加え、人間ドックの費用補助
保養施設の利用補助:家族と過ごすリフレッシュの機会提供
家族向けの福利厚生:配偶者や子供の誕生日祝い金、家族手当の充実
また、長時間労働はドライバーの健康を害し、離職率を高める要因となります。デジタル技術の活用による業務効率化が重要です。例えば、配送管理システムの導入による最適ルート設定、デジタルタコグラフによる運行管理の効率化などが挙げられます。労働時間の短縮を実現し、ワークライフバランスの改善を目指しましょう。
未経験者採用と充実した教育体制で人材プールを拡大
経験者に限定せず、未経験者からの採用を積極的に行うことで、人材プールの拡大を図ることができます。未経験者向けの研修制度を充実させ、一人前のドライバーへと育成するためのサポート体制を整えることが重要です。
具体的には、座学と実務研修を組み合わせたプログラムが効果的です。
座学研修:安全運転の基礎、交通法規、車両の構造と点検方法
実務研修:ベテランドライバーとの同乗研修、段階的な独り立ち支援
資格取得支援制度:大型免許、けん引免許などの取得費用補助
このような充実したサポート体制により、早期の戦力化を促進できます。また、資格取得支援制度を設けることで、キャリアアップを支援し、長期的な人材育成につなげることができます。
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4.高卒採用が運送業界の未来を変える理由

特に注目すべき人材確保の方法が、高卒採用です。若年層の雇用を積極的に進めることで、業界全体の活力を取り戻し、長期的な人材確保につなげることが可能です。
高卒採用が運送業界にもたらす3つのメリットをご紹介します。
1. 若年層の柔軟な思考と高い吸収力
高卒者は柔軟な思考を持ち、新しい知識やスキルの吸収力が高いという特徴があります。デジタル技術の活用や、新しい配送システムへの適応も比較的スムーズです。先入観なく業務に取り組めるため、育成によって即戦力として成長できるポテンシャルを持っています。
2. 長期的な人材育成による即戦力化
高校卒業後すぐに採用することで、企業の文化や価値観を若いうちから身につけてもらうことができます。長期的な視点で育成することで、将来の幹部候補として成長させることも可能です。10年、20年と長く働いてもらえる人材を確保できることは、企業にとって大きな財産となります。
3. 業界全体の活力回復
若い世代が運送業界に入ることで、職場に活気が生まれます。また、若者が働く姿をSNSなどで発信することで、業界のイメージ改善にもつながります。「若い人も活躍できる業界」というイメージが広がれば、さらなる人材確保にもプラスに働きます。
高卒採用を成功させるためには、以下のポイントが重要です。
学校との関係構築:進路指導の先生との信頼関係を築く
働きやすい環境整備:若者が長く働ける職場づくり
明確なキャリアパスの提示:「5年後、10年後にこうなれる」というビジョンを示す
高卒採用の具体的なノウハウや成功事例については、高卒採用を専門とする「高卒採用ラボ」で詳しく解説されています。運送業界での高卒採用を本格的に検討されている方は、ぜひこちらの記事をご参照ください。
5.もう一つの選択肢|特定技能外国人ドライバーという選択

国内人材の確保に全力を尽くしても、それだけでは限界があるのが現実です。そこで注目されているのが、特定技能外国人ドライバーの活用です。
特定技能制度の概要
特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度です。運送業界でも「自動車運送業」分野で特定技能外国人の受け入れが可能となっています。
特定技能「自動車運送業」では、以下の業務に従事できます。
トラック運送業務
バス・タクシー運送業務
自動車整備業務
特定技能外国人ドライバー採用のメリット
若く意欲的な人材の確保
特定技能外国人の多くは20代〜30代の若い世代です。日本で働きたいという強い意欲を持っており、真面目に業務に取り組む姿勢が期待できます。言語の壁はありますが、適切なサポート体制を整えることで、十分に戦力として活躍できます。
長期的な雇用関係の構築
特定技能1号の在留期間は最長5年です。一定の条件を満たせば特定技能2号への移行も可能で、より長期的な雇用関係を構築できます。技能実習制度とは異なり、転職も可能なため、労働環境の改善に努めることで長く働いてもらうことができます。
人手不足の即効性ある解決
国内での採用活動が難航する中、特定技能外国人の採用は比較的スムーズに進むケースが多くあります。すでに日本語能力試験や技能試験に合格している人材も多く、受け入れ後の早期戦力化が期待できます。
特ドラWORKSのサポート体制
特ドラWORKSでは、特定技能外国人ドライバーの採用から受け入れ、定着まで、一貫したサポートを提供しています。
人材紹介:企業のニーズに合った人材のマッチング
ビザ申請サポート:複雑な在留資格申請手続きの支援
生活サポート:住居探し、銀行口座開設などの生活立ち上げ支援
定着支援:定期的なフォローアップ、トラブル対応
特定技能ドライバーの採用について詳しく知りたい方は、特ドラWORKSまでお気軽にお問い合わせください。
特定技能 運送業分野社員採用について
6.多角的アプローチで持続可能な物流システムを構築する

ここまで、運送業界の深刻なドライバー不足の現状から、2025年問題の背景、そして具体的な対策まで解説してきました。
人手不足対策は、単一の方法だけでは解決できません。複数のアプローチを組み合わせた多角的な戦略が必要です。
推奨される複合的アプローチ
労働環境の改善
適切な賃金体系の構築
魅力的な福利厚生の充実
労働時間の短縮とワークライフバランスの実現
若年層採用の積極化
高卒採用の推進
未経験者向け教育体制の整備
業界イメージの改善
多様な人材の活用
特定技能外国人ドライバーの採用
女性ドライバーの積極登用
シニア人材の活用
これらの施策を組み合わせることで、持続可能な物流システムの構築が可能になります。日本の物流を支える運送業界が、この難局を乗り越え、さらに発展していくことを願っています。
運送業界の人手不足対策についてより詳しく学びたい方は、高卒採用ラボの記事をぜひご覧ください。
また、特定技能ドライバーの採用をご検討の方は、特ドラWORKSまでご相談ください。貴社の人材確保をしっかりとサポートいたします。







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