運送業の人手不足は当たり前?データで見る原因と業界課題
- 高橋 壮
- 6 日前
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「運送業は人手不足で当たり前」そんな言葉を、現場にいる方ほど実感しているのではないでしょうか。求人を出しても人が来ない、既存のドライバーの負担が増える一方で、状況はなかなか改善しない。
この記事では、感覚論ではなくデータをもとに人手不足の実態と原因を整理し、なぜ解消しないのか、何を変えるべきなのかをわかりやすく解説します。読み進めることで、現場の悩みを構造的に理解し、次の一手を考えるヒントが見えてきます。
1.運送業の人手不足は当たり前と言われる現状

運送業人手不足データで見る実態
結論からお伝えすると、運送業の人手不足は感覚的な問題ではなく、データで見ても深刻な状況です。国の統計では、トラックドライバーの有効求人倍率は全産業平均の約2倍前後で推移しており、「1人を採用するために2社以上が競っている」状態が続いています。

理由として、少子高齢化による労働人口の減少に加え、ドライバーの高齢化が同時に進んでいる点が挙げられます。実際、ドライバーの約6割が45歳以上というデータもあり、若手が十分に補充されていません。
さらに、2024年以降は労働時間規制が強化され、同じ人数でも運べる量が減少しています。数字を見れば見るほど、現場の負担増加と採用難が重なり、人手不足が「構造的な問題」になっていることがわかります。

ドライバー不足は嘘と言われる理由
結論として、ドライバー不足が「嘘」と言われる背景には、業界内の見え方のズレがあります。理由は、ドライバーの人数自体が急激に減っているわけではなく、統計上は横ばいに近い推移をしているためです。この数字だけを見ると「本当に足りていないのか?」と疑問を持つ人も出てきます。

ただし実態は異なり、働ける条件を満たす人が減っているのが現状です。長時間労働に対応できる人、特定の免許を持つ人、特定エリアで働ける人など、企業が求める条件が限定されているため、採用できないケースが増えています。つまり人数ではなく「ミスマッチ」が問題であり、ここを見落とすと人手不足の本質を誤解してしまいます。
人手不足でワースト1位なのは何ですか?
結論から言うと、人手不足が特に深刻な業種として多く挙げられるのは運送業と介護業です。理由は、どちらも体力的・精神的な負担が大きく、労働条件が他業種より厳しい傾向にあるからです。

中でも運送業は、長時間拘束、不規則な勤務、天候や交通状況に左右される仕事特性があり、敬遠されやすい職業の代表例といえます。具体的には、国の調査でも「不足」と回答する事業所の割合が6割を超え、全産業の中でも上位に位置しています。
人手不足が続くと、既存の従業員に負担が集中し、離職が増える悪循環に陥ります。だからこそ、運送業は早急な働き方の見直しが求められているのです。
2.運送業の人手不足が当たり前になる原因

運送業界で人手不足の原因は何ですか?
運送業界の人手不足が起きている主な原因は、仕事の負荷と待遇のバランスが合っていない点にあります。

ドライバーの業務は、運転だけでなく荷待ちや積み下ろし、時間指定への対応など付帯作業が多く、想像以上に拘束時間が長くなりがちです。一方で、賃金は「労働時間に対して高い」と感じられにくく、他業界と比較されて敬遠されやすくなっています。
さらに免許制度の変更により、中型・大型免許が必要になり、参入のハードルも上がりました。
加えて、2024年以降の労働時間規制で働き方が変わり、現場に余裕がなくなったことも影響しています。これらの要素が重なり、現場レベルで人手不足が慢性化しているのです。

運送業に人が入ってこない理由
運送業に人が入ってこない背景には、仕事の実態が正しく伝わっていないという問題があります。多くの人が「長時間・きつい・危険」というイメージを先に持ち、具体的な改善や変化を知る前に選択肢から外してしまいます。

加えて、若年層はワークライフバランスを重視する傾向が強く、不規則な勤務や早朝・深夜の仕事がある職種を避けがちです。求人情報でも「稼げる」だけを強調すると、入社後にギャップを感じて離職につながります。結果として、応募そのものが減り、入ってきた人も定着しにくい状況が続きます。情報発信と働き方の見直しが追いついていないことが、採用難を加速させているのです。
運送業人手不足が解消しない構造的問題
運送業の人手不足が解消しないのは、個々の企業努力では埋めきれない構造的な問題があるからです。

物流は「安く・早く・正確に」を前提に発展してきたため、現場の負担が長年積み重なってきました。運賃は簡単に上げられず、コスト削減のしわ寄せが人件費や労働環境に及んでいます。その結果、人を増やしたくても余力がなく、少人数で回す体制が常態化しました。
さらに荷主・運送会社・ドライバーの立場が分断され、改善の主導権が不明確な点も課題です。この仕組み自体を見直さなければ、対症療法では人手不足は繰り返され続けます。
3.運送業の人手不足が当たり前な業界への影響

運送業人手不足が物流に与える影響
運送業の人手不足は、物流全体の品質と安定性に直接的な影響を与えます。ドライバーが足りない状態が続くと、まず起こるのが配送遅延や集荷制限です。

現場では一人当たりの負担が増え、休憩や休日が削られやすくなり、疲労の蓄積によって事故リスクも高まります。さらに、対応できる荷物量が減ることで、企業は配送条件の見直しや値上げを迫られ、結果的に消費者の負担にもつながります。

前述の通り、人手不足は単なる採用の問題ではなく、サプライチェーン全体に影響を及ぼす構造的な課題です。物流が止まれば経済活動も停滞するため、運送業の人材確保は社会インフラを守る視点で考える必要があります。
人手不足がヤバい職業ランキングは?
人手不足が深刻とされる職業には、運送業のほかに介護、建設、飲食、医療などが並びます。共通点は、体力的・精神的負担が大きい一方で、賃金や社会的評価が追いついていない点です。
特に運送業は求人倍率が高水準で推移し、応募者より求人数が大きく上回っています。介護や建設は国の支援制度が進む一方、物流は「当たり前に届く」ことが前提のため、課題が見えにくい側面があります。
その結果、改善が後回しにされやすく、ランキング上位の常連になっています。人手不足ランキングは、職業の価値が低いのではなく、社会構造とのミスマッチを示す指標として捉えるべきです。
ヤマト運輸の人手不足から見る業界課題
ヤマト運輸の人手不足は、業界全体の課題を象徴しています。宅配需要の増加により業務量が拡大する一方、ドライバーの確保が追いつかず、サービス見直しや料金改定を余儀なくされました。

これは一企業の問題ではなく、現場の負担を前提に成り立ってきた物流モデルの限界を示しています。ヤマト運輸では集配エリアの再編や業務効率化を進めていますが、根本的な解決には至っていません。
前述の通り、労働条件や評価制度、荷主との関係性を含めた構造改革が求められます。大手でさえ苦戦する現実は、中小企業にとっても他人事ではない警告と言えるでしょう。
4.運送業の人手不足は当たり前でも対策はある

運送業人手不足対策の基本的な考え方
運送業の人手不足対策では、まず「採用」だけに頼らない視点を持つことが重要です。人を集める前に、今いる人が辞めにくい環境を整えることが対策の土台になります。

長時間労働や不規則な勤務を見直し、業務の無駄を減らすことで、現場の負担は大きく軽減されます。
次に、業務の切り分けも欠かせません。ドライバーが本来の運転以外の作業に追われている場合、補助人員や外部サービスを活用するだけでも定着率は変わります。
さらに、採用時には「即戦力」だけを求めず、育成前提の仕組みを整えることで応募の間口が広がります。人手不足は短期解決が難しい課題だからこそ、環境改善と育成を同時に進める姿勢が求められます。
ヤマト運輸の人手不足対策に学ぶ
ヤマト運輸は人手不足に対し、現場負担の分散と業務効率化を軸に対策を進めてきました。代表的なのが、配達時間帯の見直しや置き配の推進、集配ルートの再編です。これによりドライバー一人当たりの拘束時間を減らし、業務の平準化を図っています。

また、デジタル端末を活用した業務管理や、仕分け工程の自動化も進められています。注目すべきは、対策を「現場目線」で進めている点です。単に効率を求めるのではなく、働きやすさを改善することで離職を防ぎ、結果的に人材確保につなげています。
大手の取り組みは、そのまま中小企業に当てはめられない場合もありますが、考え方そのものは十分に参考になります。
5.運送業の人手不足を当たり前で終わらせないために

業界全体に必要な意識改革
運送業の人手不足を本質的に解決するには、企業単体の努力だけでなく、業界全体の意識改革が欠かせません。これまで運送業界では「忙しくて当たり前」「人が足りないのは仕方ない」という空気が根強くありました。しかし、この考え方を続ける限り、人材は他業界へ流れ続けます。

重要なのは、働き方を時代に合わせて変えていく姿勢です。長時間労働を前提としない運行計画や、若手・女性・未経験者でも働きやすい環境づくりは、企業の魅力そのものになります。また、業界内での情報共有や共同配送など、競争だけでなく協力の視点も必要です。
人手不足は構造的な問題だからこそ、業界全体で価値観を更新し続けることが将来の安定につながります。
採用と定着を改善する視点
採用と定着を改善するためには、「入れること」と「続けてもらうこと」を切り離して考えない視点が重要です。多くの企業が採用に力を入れても、定着しなければ人手不足は解消されません。

まず見直すべきは、入社前と入社後のギャップです。仕事内容や勤務時間、休日の取り方を正確に伝えることで、ミスマッチによる早期離職を防げます。
次に、評価とコミュニケーションの仕組みづくりが欠かせません。日々の頑張りが見えにくい仕事だからこそ、声かけや仕組みで承認することが定着につながります。採用は入口、定着は土台です。両方を同時に整えることで、無理のない人材確保が可能になります。
6.まとめ


運送業の人手不足は、もはや一時的な問題ではなく、業界構造そのものに根付いた課題だといえます。データが示す通り、採用難や高齢化、労働環境の負担増は複合的に絡み合い、「当たり前」として受け止められてきました。
しかし、そのまま放置すれば、物流の質は低下し、企業活動や私たちの生活にも確実に影響が広がります。重要なのは、人手不足を嘆くことではなく、向き合い方を変えることです。働き方の見直し、現場の効率化、正しい情報発信、そして業界全体での意識改革を進めることで、状況は少しずつ変えられます。
運送業が持続的に選ばれる仕事になるかどうかは、今この課題にどう向き合うかにかかっています。




