日本の交通ルールで外国人ドライバーがよく間違えるポイント
- 高橋 壮
- 11月5日
- 読了時間: 10分

目次:
日本での運転は、母国とは大きく異なるルールやマナーがあり、戸惑うことも多いのではないでしょうか。交通ルールの理解不足は重大な事故につながる可能性があり、安全運転の知識は皆さんの生命と仕事を守る最も重要なスキルです。
この記事では、日本で働く外国人ドライバーがよく間違えやすい交通ルールのポイントを詳しく解説します。母国との違いを理解し、正しい知識を身につけることで、安心して日本で長く働き続けることができるでしょう。
1. 基本的な違い【母国との根本的な差異】
左側通行と右ハンドル
日本では車は左側通行ですが、これは世界的には珍しいルールです。実は、世界の約70%の国が右側通行を採用しており、左側通行の国は日本、イギリス、インド、オーストラリアなど限られた国のみです。
左側通行に慣れるまでの期間は、特に交差点での右折・左折時に混乱しやすくなります。右折時は対向車線の直進・左折車を優先させなければなりませんが、右側通行に慣れている方は、つい直進してしまうことがあります。これは重大な事故につながる可能性があります。
また、日本の車は基本的に右ハンドルです。左ハンドル車に慣れている方にとって、車幅感覚をつかむのは最初は難しいでしょう。特に左折時の巻き込み事故に注意が必要です。さらに、ハンドル周りのウインカーとワイパーの位置も逆になるため、慣れるまでは交差点でウインカーの代わりにワイパーを動かしてしまうこともよくあります。
道路・駐車場の狭さ
アメリカ、中国、ブラジルなど国土の広い国と比べて、日本の道路は非常に狭いのが特徴です。特に都市部では、対向車とすれ違うのがやっとという道路も珍しくありません。
駐車場も同様に狭く、多くの日本人はバック駐車(後向き駐車)を基本としています。前向き駐車が一般的な国から来た方には、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、バック駐車に慣れることで、出庫時の安全確認がしやすくなり、事故防止につながります。
注意:日本では指定区域以外の路上駐車は駐車違反となり、厳しい罰則があります。母国で路上駐車が一般的だった方も、必ず駐車場や指定区域を利用してください。
2. 道路標識の重要な違い【最も事故につながりやすい】

一時停止標識(逆三角形)
日本で最も見落としやすい標識の一つが「止まれ」の一時停止標識です。この標識は赤い逆三角形で、中央に日本語で「止まれ」と書かれています。
多くの国では一時停止標識は赤い八角形(STOP)ですが、日本は独特の形状を採用しています。日本語が読めない方にとって、この標識の意味を理解するのは困難です。しかし、この標識を見落とすと、優先道路に飛び出してしまい、重大な事故を引き起こす可能性があります。
赤い逆三角形を見たら、必ず完全停止することを覚えておいてください。車輪が完全に止まってから、左右の安全を確認して進行します。
徐行標識
日本では、白い逆三角形に「徐行」と書かれた標識があります。これは「いつでも停止できる速度で進む」という意味です。
注意が必要なのは、アメリカなどでは逆三角形の標識は「前方車両に譲れ(YIELD)」という意味になることです。日本語が読めない場合、この違いで混乱してしまう可能性があります。白い逆三角形を見たら、速度を落として慎重に進むことを心がけてください。
駐停車禁止(時間指定)
日本の駐停車禁止標識は、時間指定が非常に細かく設定されています。例えば「平日8:00-20:00駐車禁止」「土日祝日除く」などの複雑な条件があります。
これらの標識は日本語で書かれているため、理解が困難です。しかし、違反すると「放置車両確認標章」という黄色いステッカーが貼られ、罰金を支払わなければなりません。標識の意味がわからない場合は、駐車を避けることが安全です。
通行止め・進入禁止
日本の市街地には一方通行の道路が多く、通行止めや進入禁止の標識も頻繁に見かけます。特に商店街などでは、時間指定で通行止めになる場所もあります。
間違って侵入すると、対向車と正面衝突する危険があります。赤い丸に白い横線の標識(進入禁止)や、時間表示のある通行止め標識を見たら、必ず迂回ルートを選択してください。
3. 信号機のルールとマナー

信号機の設置位置
日本の信号機は、交差点の「奥側」に設置されています。国によっては交差点の手前に設置されているため、慣れない方は信号を見落とすことがあります。
交差点に近づく際は、必ず交差点の向こう側を確認し、信号の状態をしっかりと把握してから進行してください。
黄色信号の意味と日本の運転文化
日本の黄色信号は、法律上は「止まれ(安全に停止できない場合を除く)」という意味です。しかし、実際の運転では、黄色信号で加速する車も見られます。
これは、日本の信号機が全方向赤信号の時間を長めに設定しているためです。外国では全方向赤の時間が短い、またはない国が多いため、外国人の方が黄色で停止すると、後続車が急ブレーキを踏むことがあります。
交通ルールを正しく守る外国人ドライバーの行動は正しいのですが、後続車の動きも予測して安全運転を心がけましょう。
ポイント:黄色点滅信号は「注意して進め」の意味です。通常の黄色信号とは異なり、停止する必要はありません。
赤信号での右左折禁止
日本では赤信号時の右左折は原則禁止です。これはアメリカや韓国などと大きく異なるルールです。
アメリカでは赤信号でも右折(日本の左折に相当)が可能な場合が多く、韓国でも同様です。しかし、日本では矢印信号が点灯した場合のみ、赤信号でも指定方向に進むことができます。
赤信号で右左折してしまうと、信号無視として厳しい罰則が科せられるため、十分注意してください。
4. 日本独特の交通ルール

踏切での一時停止
日本では、踏切の前では必ず一時停止をしなければなりません。これは遮断機が上がっていて電車が来ていない状態でも同様です。
多くの国では踏切での一時停止は義務ではないため、外国人ドライバーは戸惑うことがあります。しかし、日本は鉄道網が非常に発達しており、踏切事故を防ぐため、この厳格なルールが設けられています。
踏切手前では完全停止し、左右の安全を確認してから進行してください。また、踏切内で渋滞に巻き込まれないよう、踏切の先まで進める余裕がある時のみ渡るようにしましょう。
歩行者優先の徹底
日本ではどんな場合でも歩行者が最優先です。これは国によって異なる考え方で、車両優先の文化がある国から来た方は注意が必要です。
横断歩道では、歩行者がいる場合は必ず停止しなければなりません。また、信号のない横断歩道でも、歩行者が渡ろうとしている場合は減速・停止が義務です。
歩行者の通行を妨害すると「横断歩行者妨害」として、違反点数2点、反則金9,000円(普通車)の罰則があります。歩行者を見かけたら、必ず歩行者の動きを優先してください。
左方優先のルール
信号機がなく、優先関係が明確でない交差点では、「左方優先」のルールが適用されます。これは、自分から見て左側から来る車を優先させるというルールです。
このルールは、道幅が同じで優先道路の標識がない場合に適用されます。事故が起きた場合、左側の車の方が過失が小さくなるため、相手が右側にいる場合は譲る心がけが大切です。
5. 日本のマナーと暗黙のルール

サンキューハザード
「サンキューハザード」は日本独特の運転マナーです。道を譲ってもらった時や合流を許可してもらった時に、ハザードランプを2〜3回点滅させてお礼を表します。
外国では一般的でないため、外国人ドライバーは「故障したのか?」「急に減速するのか?」と混乱することがあります。これはお礼の意味であり、緊急事態ではないことを理解しておきましょう。
クラクション使用制限
日本ではクラクション(警音器)の使用が厳しく制限されています。挨拶やお礼でクラクションを鳴らすことは交通違反になります。
クラクションを鳴らしてよいのは、「警笛鳴らせ」の標識がある場所と、危険を防止するためやむを得ない時のみです。不適切な使用は「警音器使用制限違反」として反則金3,000円が科せられます。
自転車の通行
日本の自転車は車道と歩道の両方を通行できるため、予測しにくい動きをすることがあります。多くの国では自転車の通行区域が明確に分かれているため、日本の自転車の動きに戸惑う外国人は多いです。
自転車は突然歩道から車道に出てきたり、信号を無視したり、道路の右側を通行したりすることがあります。自転車を見かけたら、十分な車間距離を保ち、予測不可能な動きに備えることが重要です。
6. 制限速度と取り締まり

日本では制限速度が細かく設定されています。
一般道(都市部):40km/h
住宅街:20〜30km/h
高速道路:80〜100km/h
その他の道路:50〜60km/h
スピード違反は日本で最も検挙件数の多い交通違反です。道路標識で制限速度を確認し、他の車の流れに合わせすぎず、制限速度を守ることが重要です。
警察は移動式の速度測定器や覆面パトカーによる取り締まりを頻繁に行っています。「少しくらい大丈夫」という考えは危険です。
7. 罰則と違反点数について

日本の交通違反には点数制度があります。
軽微な違反:1〜2点
中程度の違反:3〜4点
重大な違反:6点以上
重要:3年間で6点以上になると免許停止処分を受けます。15点以上で免許取消となり、日本での運転ができなくなります。
外国人であっても「知らなかった」では済まされません。違反を繰り返すと、特定技能の資格にも影響する可能性があります。
8. 実践的なアドバイス

運転前の準備
日本の交通標識を事前に学習:警察署で配布している多言語の交通安全ガイドを活用
ルートの事前確認:初めての場所は地図で一方通行や駐車場を確認
十分な練習:慣れるまでは経験者と一緒に練習
運転中の心構え
「かもしれない運転」:歩行者が飛び出すかもしれない、自転車が急に進路変更するかもしれないという予測運転
余裕のある速度と車間距離:慣れないうちは特に安全マージンを大きく
標識が理解できない時は安全側に判断:迷った時は停止や迂回を選択
困った時の対処法
職場の同僚や上司に相談:経験豊富な先輩からアドバイスをもらう
警察に問い合わせ:交通ルールで不明な点があれば最寄りの警察署で確認
多言語対応の教材活用:インターネットや図書館で外国人向けの交通安全資料を探す
お役立ち情報:警視庁のウェブサイトでは、外国人向けの交通安全情報を多言語で提供しています。定期的にチェックして最新の情報を確認しましょう。
9. まとめ

日本の交通ルールは確かに独特で複雑な面がありますが、これらは全て安全のために作られたルールです。母国との違いに戸惑うことは当然ですが、正しい知識を身につけることで、事故を防ぎ、安心して日本で働き続けることができます。
特定技能外国人ドライバーとして、皆さんは日本の社会を支える重要な役割を担っています。交通ルールを守ることは、自分自身の安全だけでなく、職業ドライバーとしての責任でもあります。
最初は覚えることが多く大変かもしれませんが、毎日の運転で少しずつ慣れていけば必ず身につきます。「安全第一」の気持ちを忘れず、余裕を持った運転を心がけてください。
困った時は一人で抱え込まず、職場の仲間や交通安全の専門機関に相談することも大切です。皆さんが安全に長く日本で活躍できることを願っています。
最後に:この記事の内容で不明な点があれば、勤務先の特ドラWORKSにもお気軽にご相談ください。皆さんの安全な就労をサポートいたします。



