外国人ドライバー受入れの社内準備|日本人社員への説明と現場の体制

「外国人ドライバーを採用したいが、今いるドライバーがどう受け止めるか心配だ」。受入れを考える運送会社の経営者や所長から、よく聞く声です。制度の手続きは進められても、現場の空気づくりは手探りになりがちです。
受入れがうまくいくかどうかは、来日前の社内準備で大きく変わります。日本人ドライバーへの説明の仕方、教育係や点呼の体制、ハラスメントを防ぐルールまで、社内で整えておきたいことを順に整理します。
📋 目次
1.受入れの成否は「社内の準備」で変わる
外国人ドライバーの受入れは、採用担当だけの仕事ではありません。点呼を行う運行管理者、横で働く先輩ドライバー、配車担当まで、現場全体で迎える準備が要ります。来日の前に、社内で同じ情報を共有しておくことが出発点です。
外国人ドライバーが最初に接するのは、経営者よりも現場の人たちです。朝の点呼、車両の点検、荷主先での作業など、毎日の小さなやりとりの積み重ねで職場への信頼が生まれます。
反対に、現場が「急に決まった」「何も聞いていない」と感じていると、受入れ後に協力を得にくくなります。説明の場を設け、疑問に答える時間をとることが大切です。
離職を防ぐ視点は「外国人ドライバーは続かない」は本当か?でも詳しく紹介しています。
2.日本人ドライバーが抱きやすい不安と説明のポイント
現場の不安の多くは、制度を知らないことから生まれます。給与の水準、運転の力、日本語の力など、制度で決まっている事実をもとに説明すると、誤解を減らせます。不安を否定せず、具体的な対策とセットで伝えることが大切です。
社内説明の場でよく出る疑問と、説明の材料は次のとおりです(制度の内容は2026年10月時点)。
よくある疑問 | 説明のポイント | 根拠となる制度 |
安く雇うための採用では? | 報酬は日本人と同等額以上にする必要がある | 出入国在留管理庁 運用要領 |
運転は任せて大丈夫? | 分野の評価試験に合格し、日本の運転免許を取ったうえで乗務する。社内でも同乗研修を行う | 自動車運送業分野 運用要領 |
日本語は通じる? | 基本的な日本語の試験に合格している。業務の言葉は職場で覚えていく | 自動車運送業分野 運用要領 |
雑用ばかり任されるのでは? | 仕事の中心は運行と荷役。清掃などの関連業務は付随的にとどまる | 自動車運送業分野 運用要領 |
誰が生活の面倒を見るの? | 会社または登録支援機関が支援計画にもとづいて支援する | 1号特定技能外国人支援に関する運用要領 |
大切なのは、「心配はいらない」と言い切らないことです。たとえば運転については、「最初の数か月は先輩が同乗し、点呼で毎日確認する」など、会社として何をするかを具体的に伝えます。
安全面の考え方は外国人ドライバーは事故が心配?でも解説しています。
3.説明の前に押さえる制度の事実(2026年10月時点)
社内説明では、制度の要件を正確に伝えることが信頼につながります。トラックの特定技能は、試験、日本語、運転免許の3つの条件がそろって初めて乗務できます。受入れ企業の側にも、認証の取得や協議会への加入などの要件があります。
自動車運送業分野の運用要領は、2026年10月9日にも一部改正されています。トラック運送業に関する主な内容は次のとおりです(出典:出入国在留管理庁・国土交通省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領(自動車運送業分野)」2026年10月一部改正)。
項目 | 内容 |
主な業務 | 運行業務(安全な貨物の輸送など)と荷役業務(荷崩れを起こさない積付けなど) |
関連業務 | 車両の清掃や運行前後の準備は付随的に行ってよいが、関連業務だけに従事させることは認められない |
技能の条件 | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)に合格し、日本の第一種運転免許を取得していること |
日本語の条件 | 日本語教育の参照枠A2.2相当以上。国際交流基金日本語基礎テスト(A2.2相当以上)または日本語能力試験N4以上の合格で確認する |
受入れ企業の条件 | 運転者職場環境良好度認証制度の認証、または安全性優良事業所(いわゆるGマーク)の認定を受けた事業所があること。国土交通省の協議会の構成員であること |
免許取得までの期間 | 免許取得の準備のための在留資格(特定活動)は、トラックの場合6か月が上限 |
報酬については、外国人の報酬額が日本人と同等額以上であることが求められています(出典:出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」)。社内説明で給与に触れるときは、この点を最初に伝えると誤解が生まれにくくなります。
日本語の条件はあくまで最低ラインです。日本語能力の目安は外国人労働者の日本語レベルとは?でも紹介しています。

4.現場の体制づくり|教育係・点呼・配車
受入れ前に、教育係、点呼での確認方法、最初に任せる仕事の3つを決めておきます。担当が決まっていないと、現場の誰もが「誰かが教えるだろう」と考えてしまいます。役割を明確にすると、日本人ドライバーの負担感も減らせます。
教育係を決める
同乗研修を担当する先輩ドライバーを、あらかじめ決めておきます。教え方が丁寧で、普段から後輩の面倒見がよい人が向いています。教育係の負担が増える分、手当や評価で報いる仕組みがあると、引き受けてもらいやすくなります。
点呼での確認方法をそろえる
点呼では、運行管理者が伝えた内容を本人に復唱してもらいます。「分かりましたか」と聞くだけでは、分かっていなくても「はい」と答えてしまうことがあるからです。日本人ドライバーにも同じやり方をとると、特別扱いに見えず、職場全体の確認の質も上がります。
最初に任せる仕事を決める
配属直後は、ルートが決まった定期便や、荷主先の作業が分かりやすい仕事から始めます。荷主には、新しいドライバーが入ることを事前に伝えておきます。慣れてきたら、少しずつ担当を広げていきます。
5.日本人ドライバーとの関係づくりとハラスメント防止
ハラスメントを防ぐルールは、外国人ドライバーのためだけでなく、職場全体を守るものです。パワハラ防止の措置は、中小企業でも2022年4月から義務になっています。受入れの前に方針と相談窓口を改めて周知しておきます。
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを、次の3つをすべて満たす行為と説明しています(出典:厚生労働省 パンフレット)。
優越的な関係を背景とした言動であること
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
労働者の就業環境が害されるものであること
事業主には、方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事後の迅速な対応などの措置が義務づけられています。中小企業も2022年4月1日から義務の対象です。
外国人ドライバーを受け入れる職場では、「日本語が下手だ」とからかう、仕事の説明をせずに放っておく、といった言動に注意が必要です。指導が業務上必要な範囲であれば、ハラスメントにはあたりません。大切なのは、指導の内容と伝え方を分けて考えることです。
相談の窓口は、本人が十分理解できる言語で対応できる体制が望まれます。支援計画にもとづく相談対応でも、本人が理解できる言語での対応が求められています(出典:出入国在留管理庁 1号特定技能外国人支援に関する運用要領)。
6.採用前から社内に共有できる情報
社内の不安を和らげるには、「どんな人が来るのか」を具体的に伝えるのが近道です。日本語の学習状況や、採用の段階で確かめた運転の様子は、よい説明材料になります。来日前から現場と情報を共有し、迎える準備を一緒に進めます。
本人の顔写真と名前、出身地、日本語の学習状況などを、本人の同意を得たうえで朝礼などで共有すると、現場の受け止め方が変わります。来日前にオンラインであいさつの機会をつくる方法もあります。
特ドラWORKSの場合:インドネシア・ソロ(スラカルタ)の自社研修施設「GLORY CAMP」で、来日前に約300時間の日本語学習と研修を行っています。どのような学習を積んできた人なのかを、社内への説明に生かすことができます。
受入れ企業の取り組みは、報道でも紹介されています。毎日新聞(2026年7月、「移民と社会」シリーズ)にも掲載されました。特ドラWORKSが紹介したインドネシア人ドライバーと、受入れ企業の株式会社鳥羽運送様(和歌山県)の取り組みです。
7.自社の受入れ準備チェック
次の8項目で、社内の受入れ準備ができているかを確認できます。当てはまらない項目は、内定から来日までの間に手を打ちます。特に教育係と相談窓口は、来日後に決めると後手に回りやすい項目です。
✓ 社内説明の場を設けた(点呼担当・先輩ドライバー・配車担当まで)
✓ 給与の考え方を説明できる(日本人と同等額以上が要件であること)
✓ 制度の要件を一覧にした(試験・日本語・免許・受入れ企業の条件)
✓ 教育係を決めた(同乗研修の担当と、その負担への手当や評価)
✓ 点呼の確認方法をそろえた(復唱など、全員に同じやり方をとる)
✓ 最初に任せる仕事を決めた(定期便など、分かりやすい仕事から)
✓ ハラスメント防止の方針を周知した(相談窓口と対応の流れを含む)
✓ 本人の情報を共有する準備がある(本人の同意を得たうえで共有する)
7項目以上に当てはまれば、受入れの準備は整いつつあります。5項目以下の場合は、社内説明と教育係の決定から始めるのがおすすめです。
8.よくある質問
受入れ前の社内準備について、運送会社からよく寄せられる質問をまとめました。制度の細かな要件は、出入国在留管理庁と国土交通省の最新情報で確認してください。
質問 | 回答 |
日本人ドライバーより給与を低くできますか? | できません。外国人の報酬額は日本人と同等額以上であることが求められています。 |
来日してすぐにトラックに乗れますか? | 日本の運転免許の取得が必要です。トラックの場合、免許取得の準備のための特定活動は6か月が上限です。 |
洗車や構内作業だけを任せてもよいですか? | 関連業務を付随的に行うことは差し支えありませんが、関連業務だけに従事させることは認められていません。 |
教育係はどう選べばよいですか? | 教え方が丁寧で、面倒見のよいドライバーが向いています。負担に応じた手当や評価があると引き受けてもらいやすくなります。 |
厳しく指導するとパワハラになりますか? | 業務上必要かつ相当な範囲の指導は、パワハラにはあたりません。人格を否定する言い方などは避けます。 |
受入れ後の生活の支援は誰が行いますか? | 受入れ企業が支援計画にもとづいて行います。登録支援機関に委託することもできます。 |
9.まとめ
外国人ドライバーの受入れは、制度の手続きと社内の準備の両輪で進めます。制度の事実をもとに説明し、教育係や点呼の体制を整えれば、現場の不安は減らせます。来日前から、迎える側の準備を始めましょう。
受入れの成否は、採用担当だけでなく現場全体の準備で決まる
給与は日本人と同等額以上が要件で、説明の最初に伝えると誤解を防げる
トラックの特定技能は、試験・日本語・運転免許がそろって乗務できる
教育係、点呼の確認方法、最初に任せる仕事を事前に決めておく
パワハラ防止の措置は中小企業でも義務。方針と相談窓口を周知する
本人の学習状況や運転の様子を、同意を得たうえで社内に共有する
社内の準備をどこから始めればよいか迷ったら、お気軽にご相談ください。インドネシア人ドライバーの受入れの流れは、資料でもご確認いただけます。特ドラWORKSの特徴は選ばれる理由でもご紹介しています。





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