日本の物流業界で働く外国人のリアル ― 現場が語る課題と成功のカギ
- 高橋 壮
- 10月30日
- 読了時間: 14分

目次:
日本の物流業界は今、深刻な人手不足に直面しています。高齢化や長時間労働による離職が続く中、業界を支えているのが外国人ドライバーの存在です。近年、特定技能制度の導入によって、海外からの人材がトラック・バス・タクシーなど多様な分野で活躍するようになりました。
現場では、異なる文化や言語の壁を越えながら、安全運転や納期厳守といった日本特有の物流品質を学び、順応している姿が見られます。外国人ドライバーの働きぶりは、単なる労働力の補填ではなく、日本の物流を未来へつなぐ新たな原動力になりつつあります。
本記事では、そのリアルな実情と採用のヒントをお伝えします。
1. 日本の物流業界が抱える構造的課題
日本の物流業界は、慢性的な人手不足に加え、高齢化や働き方の偏りといった構造的な問題を抱えています。需要は拡大する一方で、現場で働く担い手が減少しており、物流の安定性が危機に瀕しています。この課題は今後さらに深刻化する見通しです。
トラックドライバーの高齢化・離職率
物流現場では、トラックドライバーの平均年齢が50歳を超え、高齢化が進んでいます。若年層の新規参入が少なく、体力的負担や長時間労働によって離職する人も多いのが現状です。
特に中小企業では人材確保が難しく、配送遅延や受注制限にまで影響が及んでいます。かつては「安定した職業」とされたドライバー業ですが、働く環境の厳しさから敬遠される傾向が強まっています。
このままでは物流の現場が回らなくなるという危機感が広がり、業界全体での改革が急務となっています。ベテラン層の技術継承が難しくなっている点も大きな課題です。
労働環境・待遇の現実
物流ドライバーの労働環境は、他産業と比べて依然として厳しいのが実情です。長時間労働や深夜勤務、休日出勤が常態化し、肉体的・精神的な負担が大きい職場も少なくありません。
給与水準は職務内容の重さに対して十分とは言えず、働き手のモチベーション低下につながっています。また、「2024年問題」による労働時間規制の強化で、さらにドライバーの数が不足する懸念もあります。
企業によっては改善の取り組みも進んでいますが、待遇格差が大きく、現場の意識改革までは追いついていません。持続可能な物流を実現するには、労働環境の改善と人材の多様化が不可欠です。
なぜ外国人採用が進むのか(特定技能制度の影響)
こうした人材不足を背景に、外国人ドライバーの採用が急速に広がっています。2019年に始まった「特定技能制度」により、一定の日本語力と技能を持つ外国人が、正式に物流分野で働けるようになりました。
特にインドネシアやフィリピン、ベトナムなどから多くの人材が来日し、国内物流の担い手として注目されています。企業にとっては、人手不足の解消だけでなく、多文化人材の受け入れを通じて職場の活性化にもつながる点が魅力です。
ただし、言語や文化の違いによるコミュニケーション課題もあるため、受け入れ体制の整備が欠かせません。外国人採用は一時的な補填策ではなく、今後の物流を支える重要な選択肢として位置づけられています。
特定技能 運送業分野社員採用について
2. 外国人ドライバーの実態と課題

日本の物流現場では、多くの外国人ドライバーが活躍しています。しかし、その裏側には採用から教育、定着までのさまざまな課題が存在します。制度を理解し、受け入れ環境を整えなければ、せっかくの人材も長続きしません。現場のリアルを知ることが成功の第一歩です。
採用経路(送り出し機関・特定技能)
外国人ドライバーの採用は、主に「送り出し機関」と「登録支援機関」を通じて行われます。特定技能制度を利用する場合、送り出し国(例:インドネシア・フィリピン・ベトナム)で技能試験や日本語試験を受け、合格者が企業とマッチングされます。
登録支援機関は、生活支援や行政手続きのサポートも担うため、企業単独で進めるよりもスムーズです。
この制度を活用すれば、即戦力となる人材を確保しやすい一方で、選定時に「運転技術だけ」で判断してしまうと、早期離職につながる恐れもあります。
面接時に「日本で働く目的」や「長期的なキャリア志向」を丁寧に確認することが、安定した採用の鍵となります。
現場でのギャップ(言語・文化・安全意識)
現場で外国人ドライバーが直面する大きな課題のひとつが、言語と文化のギャップです。日本語での安全指示や業務連絡を正確に理解できないと、思わぬトラブルにつながることもあります。また、日本の「時間厳守」「報連相(ほうれんそう)」の文化は、海外とは異なる価値観を持つ人にとって戸惑いの要因です。
さらに、安全意識に対する感覚の違いもあります。母国では許容される運転行動でも、日本では厳しく注意される場合があります。
そのため、採用後の研修で「日本の交通文化」や「物流現場での基本姿勢」を明確に伝えることが重要です。受け入れ企業の理解とサポートが、ギャップを埋める第一歩になります。
ビザ・免許・教育のハードル
外国人ドライバーとして働くには、特定技能ビザの取得だけでなく、日本の運転免許への切り替えが必要です。国によっては自国の免許が日本で有効ではないため、学科試験や実技試験を受け直すケースもあります。また、免許取得後も、実際の配送現場で求められる地理知識や安全運転教育が不可欠です。
教育面では、企業によるOJT(現場研修)だけでなく、言語サポートやeラーニングなどを組み合わせた学習環境が有効です。一方で、これらの手続きや教育には時間とコストがかかります。
採用前にスケジュールを十分に組み立て、行政手続きの遅延や教育不足が起きないよう計画的に進めることが求められます。
企業側の誤解と失敗例
外国人採用でよくある誤解は、「安く雇える労働力」として考えてしまうことです。実際には、採用や在留資格の手続き、生活支援などにコストがかかるため、短期的な人件費削減は期待できません。
また、文化や宗教への配慮が不足すると、早期退職やモチベーション低下を招きます。 たとえば、イスラム教徒のドライバーに配慮せず昼食に豚肉を提供してしまったり、勤務時間中の礼拝を認めなかったことで信頼関係を損ねた事例もあります。
成功している企業は、採用後のフォロー体制を整え、外国人を“仲間”として迎え入れています。表面的な採用対策ではなく、相互理解を深める姿勢が成果につながるのです。
3. 成功事例:受け入れがうまくいった企業の特徴

外国人ドライバーの受け入れが成功している企業には、共通する取り組みがあります。それは「研修」「生活支援」「社内コミュニケーション」の3点を重視していることです。単に雇うだけでなく、長期的に働ける環境づくりが成果を生んでいます。
研修体制・多言語マニュアルの整備
受け入れがうまくいっている企業ほど、入社時の研修を丁寧に行っています。特に、外国人にとって難しいのが日本独自の交通ルールや荷扱い手順です。
そのため、成功企業では「写真・動画付きマニュアル」や「多言語対応テキスト」を導入し、視覚的に理解できる工夫をしています。また、専門用語を避けたやさしい日本語で説明したり、母国語通訳を同席させるケースもあります。
さらに、現場教育だけでなく、安全運転講習や日本語の通信教育を並行して行う企業もあります。こうした研修体制の整備が、外国人ドライバーの早期戦力化と定着率向上につながっています。教育はコストではなく“投資”と捉えている点が、成功企業の特徴です。
生活サポート・相談体制の重要性
前述の通り、仕事面の教育だけでなく「生活サポート」も欠かせません。多くの外国人ドライバーは、慣れない日本での生活に不安を感じています。住居の契約、銀行口座の開設、医療機関の利用など、日常生活に関わる支援を企業側がサポートすることで安心感が生まれます。
また、困ったときに気軽に相談できる窓口を設けることも重要です。例えば、外国人担当の相談スタッフを配置したり、LINEグループなどで生活面の質問を受け付ける企業も増えています。
このような仕組みが「この会社で長く働きたい」という意欲につながります。働く環境だけでなく、暮らしを支える姿勢こそが企業の信頼を築くポイントです。
同国出身社員のサポート活用
外国人ドライバーの受け入れ成功において、大きな役割を果たすのが「同国出身社員の存在」です。文化や価値観を共有できる先輩が社内にいることで、新しいスタッフも安心して働けます。言葉の壁や仕事上の不安を気軽に相談できるため、離職率の低下にも効果的です。
例えば、ベトナム人社員が新規採用者の研修に同席し、母国語で補足説明を行うことで理解度が高まったという事例もあります。また、プライベートでも交流を持ち、休日に食事を共にすることでチームの一体感が生まれます。
企業としては、こうした“文化の橋渡し役”を積極的に活用することで、職場全体のコミュニケーションが円滑になります。これは、単なる言語サポートを超えた重要な取り組みです。
GLORY OF BRIDGE/特ドラWORKS事例
特ドラWORKSを運営するGLORY OF BRIDGEでは、外国人ドライバーの採用から定着までを一貫してサポートしています。特に注目すべきは「現場密着型支援」です。企業の採用課題を丁寧にヒアリングし、送り出し機関と連携して最適な人材を紹介。採用後も、生活サポートや職場面談を通じてフォローを続けています。
導入企業の中には、採用から1年で外国人ドライバーの離職率を半減させた事例もあります。背景には、GLORY OF BRIDGEが作成した多言語マニュアルや、トラブル時の迅速な対応があります。
単なる人材紹介に留まらず、企業とドライバー双方に寄り添う姿勢が信頼を集めています。
特定技能 運送業分野社員採用について
4. 外国人が語る「日本で働くリアル」

日本の物流業界で働く外国人ドライバーたちは、厳しさの中にもやりがいを感じながら日々奮闘しています。母国との違いに戸惑いながらも、努力を重ねて職場に溶け込み、成長していく姿が多く見られます。ここでは、彼らが感じるリアルな声を紹介します。
実際の外国人ドライバーの声(モチベーション/苦労)
「家族のために日本で頑張りたい」「安定した収入を得て将来に備えたい」──多くの外国人ドライバーがこのような強い目的意識を持っています。彼らのモチベーションは非常に高く、任された仕事には真摯に取り組む傾向があります。
一方で、日本語での指示理解や交通ルールの細かさに苦労することも少なくありません。特に配送先でのやり取りや、積み下ろし作業時の安全確認など、言葉の壁を乗り越える努力が求められます。
しかし、多くのドライバーが「上司や仲間が丁寧に教えてくれた」「チームで支え合う雰囲気がある」と語っており、日本の職場文化に安心感を覚えています。最初は不安を抱えていた彼らが、努力を重ねて信頼される存在に成長していく過程は、企業にとっても大きな財産です。
日本の物流の魅力(安全性・チームワーク)
外国人ドライバーの多くが口を揃えて語るのは、「日本の物流はとても安全で秩序がある」という点です。車両の整備が徹底されており、荷物の取り扱いにも細やかな配慮があります。母国では時間やルールが曖昧なことも多く、日本の「安全第一」の姿勢に感銘を受ける人も多いようです。
また、チームワークの良さも魅力の一つです。配送業務は個人プレーに見えて、実際には多くの人の協力で成り立っています。倉庫スタッフ、配車担当、事務担当など、全員が連携して仕事を進める姿に「日本人の仕事の誇りを感じた」と話すドライバーもいます。こうした環境が、外国人ドライバーのやる気を支え、日本の物流品質の高さを支える力となっています。
キャリアアップの展望(特定技能→永住など)
外国人ドライバーの多くは、一時的な出稼ぎではなく「長く日本で働きたい」と考えています。特定技能資格を取得すれば最長5年間の就労が可能ですが、その後に「永住」や「技能実習からのキャリア転換」を目指すケースも増えています。特に日本語能力を磨き、信頼を得ることで、管理職や教育担当へと昇進する人も出てきました。
企業側も、長期的なキャリア形成を支援する動きが進んでいます。たとえば、日本語学習支援やリーダー研修を提供し、将来的にはチームリーダーや現場教育者として活躍してもらう仕組みを整えています。単なる労働力ではなく、組織の一員として成長できる環境を作ることが、外国人ドライバーのキャリアアップを後押ししています。
5. 採用を成功させるための3つのポイント

外国人ドライバー採用を成功させるには、単なる人材確保にとどまらず、「制度理解」「教育支援」「キャリア形成」という3つの柱をバランスよく整えることが重要です。これらを意識的に実践することで、採用後の定着率と満足度が大きく向上します。
① 法制度と手続きの理解
外国人ドライバーを採用する際に最も重要なのが、特定技能制度や在留資格に関する正確な理解です。制度の内容を把握せずに採用を進めると、ビザ更新の遅延や法的トラブルにつながる恐れがあります。
採用を検討する企業は、まず「登録支援機関」と連携し、受け入れに必要な条件や行政手続きを確認しましょう。たとえば、雇用契約書には労働条件を明確に記載し、外国人本人が理解できる言語で説明する必要があります。また、就業規則や安全教育資料の翻訳も有効です。
法令順守を徹底することは、企業の信頼を守るだけでなく、外国人本人が安心して働ける環境づくりにも直結します。初期段階での制度理解が、その後の採用成功を左右します。
② 教育・コミュニケーション支援の徹底
採用後に多くの企業が直面するのが「教育」と「コミュニケーション」の壁です。外国人ドライバーが職場に馴染み、戦力として活躍するには、段階的な教育と明確な意思疎通が欠かせません。
たとえば、現場用語や交通ルールを多言語で学べる研修を導入したり、簡潔な日本語で指示を出す工夫が有効です。初期の数ヶ月は、教育担当者や同国出身の先輩社員を中心に、マンツーマンでの指導体制を整えると理解が深まります。
また、単なる業務連絡にとどまらず、雑談や食事を通じたコミュニケーションの時間を設けることも大切です。信頼関係が築かれることで、ミスの報告や相談がしやすくなり、結果としてトラブル防止にもつながります。
③ 長期的なキャリア設計の共有
外国人ドライバーの定着を促すには、「この会社でどう成長できるか」という未来のイメージを示すことが不可欠です。短期間の労働ではなく、長く働ける職場としての魅力を伝えることが、モチベーション維持につながります。
たとえば、一定期間勤務した後に班長や教育担当に昇格できる制度を整えたり、日本語力や安全運転スキルを評価するキャリアパスを設定する方法があります。また、本人の希望に合わせて、運行管理や車両整備などへの転換もサポートできれば理想的です。
企業と本人がキャリア目標を共有することで、双方の信頼が深まり、「この会社で頑張りたい」という意欲を引き出せます。採用はゴールではなく、共に未来を描くスタートラインです。
特定技能 運送業分野社員採用について
6. よくある質問

Q1. 特定技能ドライバーを採用するにはどんな手続きが必要ですか?
→ 登録支援機関との連携や在留資格申請、雇用契約書の準備が必要です。特ドラWORKSなどの専門支援を活用するとスムーズに進められます。
Q2. 外国人ドライバーの日本語力はどの程度必要ですか?
→ 日常会話レベル(N4〜N3)が目安。安全運転・業務連絡に支障がないよう、入国前教育や現場でのフォロー体制が重要です。
Q3. 離職を防ぐために企業ができることは?
→ コミュニケーションの習慣化、生活面の支援、キャリアビジョンの共有が効果的です。同国出身スタッフのメンター制度も有効です。
7. まとめ:共に未来を運ぶために

日本の物流業界は今、まさに転換期を迎えています。人手不足が深刻化する中で、外国人ドライバーの存在は欠かせない力となりつつあります。彼らは単なる労働力ではなく、異なる文化や価値観をもたらし、職場に新たな視点と活力を与えてくれる存在です。
しかし、採用を成功させるためには、制度の理解や教育体制の整備、そして長期的なキャリア支援が不可欠です。言葉や文化の壁を乗り越え、共に働く環境を整えることが、企業と外国人ドライバー双方の成長につながります。
特ドラWORKSでは、採用から定着までをトータルで支援し、現場に寄り添ったサポートを提供しています。物流の未来を担うのは、国籍を超えて力を合わせる「人」の力です。これからの日本の物流を支えるのは、共に挑戦し、共に成長する仲間たちなのです。







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