外国人労働者推移と運送業の最新動向~2024年問題から2030年予測まで徹底解説
- 高橋 壮
- 2025年12月24日
- 読了時間: 13分

目次:

2024年10月末時点において、 日本国内の外国人労働者数は過去最高の230万人を超え、 前年から25万人以上増加しました(厚生労働省)。

この増加数は日本全体の就業者増加数(42万人) の60.5%を占めており、 日本経済が外国人材に大きく 依存している実態が浮き彫りになっています。
しかし、 物流の要である運送業界では状況が大きく 異なります。 運輸業・ 郵便業で働く 外国人労働者の割合はわずか3.3%にとどまり、 製造業(26.0%) の約8分の1という極端に低い水準です。 一方で、 業界は 2024年時点で3万5,000人のドライバーが不足し、 2030年には52万人不足(野村総合研究所) という危機的状況に向かっています。
こうした深刻な人手不足に対応するため、 2024年3月に特定技能制度「自動車運送業」 が新設され、 5年間で最大2万4,500人の受け入れが決定されました。
本記事では、 最新の統計データと倒産動向、 試験実績などの具体的な数字に基づき、「外国人労働者推移」 と「運送業」 の関係性を徹底分析します。
1.外国人労働者が最も多い産業は?

厚生労働省の「外国人雇用状況」 の届出状況(2024年10月末時点) によると、 外国人労働者数は過去最多の約230万人を記録し、 前年から約25万人(12.2%) 増加しました。 これは年間増加数として過去最大の伸びとなります。
産業別の内訳を見ると、 以下のように明確な偏りが存在します。

出典: 厚生労働省「外国人雇用状況」 の届出状況まとめ(2024年10月末時点)
製造業が全体の4分の1以上を占める一方で、 運輸業・ 郵便業は主要産業の中で最も低い割合となっています。
2.物流業界で働く外国人の割合は?

運輸業・ 郵便業の外国人労働者割合はわずか3.3%(約7.6万人) であり、 これは主要産業の中で最も低い水準です。 製造業(26%、 約60万人) と比較すると約8倍もの開きがあり、 サービス業(15.4%) や卸売業・ 小売業(13.0%) と比べても極端に低いことがわかります。
しかし、 現場では潜在的なニーズが確実に存在します。 2025年3月の調査(YOLO JAPAN) によると、 物流・ 運送業の事業所のうち42.4%が外国人ドライバーの雇用経験を持っており、 その内訳は以下の通りです。
現在雇用中: 27.1%
過去に雇用経験あり: 15.3%
さらに34.6%が「増員予定」 と回答
また、 帝国データバンクの調査(2025年8月) では、 運輸・ 倉庫業において23.1%の企業が外国人材の採用拡大を目指していることが明らかになっています。
全産業平均の外国人雇用企業割合が24.7%であることを考えると、 運送業界の3.3%という実態との大きなギャップが浮き彫りになります。
3.外国人労働者推移と運送業の人数変化

日本全体の外国人労働者数は、 2019年の約166万人から2024年の約 230万人へと5年間で約64万人増加しています。 年平均では約13万人の増加ペースでしたが、 2024年単年では過去最多の約25万人増加を記録しました。
この増加数は日本全体の就業者増加数(42万人) の60.5%を占めており、 日本の労働市場が外国人材によって支えられている現状を数字が如実に示しています。
一方、 運送業では2024年3月の制度新設を受けて、 特定技能「自動車運送業」 の試験が開始されました。 2024年12月から2025年6月までの約7か月間の実績は以下の通りです。

出典: 一般財団法人日本海事協会 公表データより 作成
試験実施国別では、 日本国内での受験者が51%(1,111人) を占め、 次いでインドネシア24%(508人) 、 ミャンマー6%(137人) と続きます。 国内43都道府県で実施され、 特に東京・ 大阪・ 愛知・ 埼玉など首都圏に受験者が集中しています。
4.他産業と比較した運送業の特徴

帝国データバンクの「外国人労働者の雇用・ 採用に対する企業の動向調査」(2025年8月実施) によると、 全産業で外国人を「雇用している」 企業は24.7%(前回調査2024年2月から1.0ポイント上昇) に上ります。 また、 採用拡大の意向がある企業は14.3%となっています。
運輸・ 倉庫業に絞ると、 採用拡大意向を持つ企業は23.1%と全産業平均(14.3%) を大きく 上回っており、 人材確保への切迫感が現れています。 しかし、 実際の外国人労働者割合は3.3%に留まっており、 「ニーズ」 と「実態」 の間に約20ポイントもの大きな乖離が存在します。
5.運送業が潰れる理由は何ですか?

運送業界は今、 かつてない経営危機に直面しています。 東京商工リサーチと帝国データバンクのデータを統合すると、 倒産の深刻さが数字で明確に見えてきます。
年度 | 倒産件数 | 前年比 | 特記事項 |
2023年 | 328件 | - | - |
2024年 | 374件 | +14% | 4年連続増加 |
2025年度上半期 | 163件 | -15.1% | 5年ぶり減少 |
出典: 東京商工リサーチ、 帝国データバンクデータより 作成
特に深刻なのが「人手不足倒産」 の急増です。 東京商工リサーチのデータによると、 2024年度上半期の人手不足倒産は148件(前年同期比1.8倍) と急増しており、 運送業も大きな影響を受けています。
また、 帝国データバンクの月次データ(2025年8月) では、 運輸・ 通信業の倒産が10件を記録し、 小売業(17件) 、 建設業(20件) に次ぐ水準となっています。 2025年1-8月の累計では615件と高止まりしており、 業界の厳しさは継続しています。
運送業が経営破綻する主な理由は以下の複合的要因です。
課題 | 内容 |
燃料価格の高騰 | 2024年の燃料価格上昇で経費が増大し、運賃転嫁が追いつかず利益率が悪化 |
ドライバー不足 | 2024年時点で約3万5,000人不足。人が集まらず車両が稼働できない |
人件費の高騰 | 賃金は前年比7.4%増で、人材確保競争が経営を圧迫 |
2024年問題 | 時間外労働年960時間規制により、1台あたり売上が減少 |
小規模事業者の脆弱性 | 採用難と募集コスト増により、規模の小さい企業ほど事業継続が困難 |
6.人手不足が深刻化する構造的要因

人手不足の直接的な引き金となったのが、 2024年4月から施行された「働き方改革関連法」 による時間外労働の上限規制(年960時間) と改正改善基準告示です。
これにより、 1人のドライバーが運べる荷物の量が物理的に減少し、 物流業界全体で輸送能力が不足する事態となっています。
ドライバー不足の推計データ:

年 | 不足人数 | 出典 |
2024年 | 約3万5,000人不足 | 国土交通省試算 |
2030年 | 約52万人不足 | 野村総合研究所 |
2030年 | 約28万人不足 | 国土交通省(別試算) |
輸送能力への影響を見ると、 国土交通省の試算では2030年に輸送能力が約34%低下する可能性が指摘されています。 これは、 現在運べている荷物の3分の1が運べなく なることを意味します。
構造的な問題として、 以下のデータが示されています。
項目 | 内容 |
運送業従事者数 | 約201万人(令和5年・総務省調査) |
ドライバー数 | 約88万人(輸送・機械運転従事者) |
平均年齢 | 48歳(全産業平均より高い) |
女性ドライバー比率 | 2.9%(全職業平均44.5%) |
若年層比率 | 29歳以下は10%未満 |
総務省の統計によると、 男性労働者は2019年の3,841万人をピークに 2024年には3,800万人に減少しており、 トラック運転手の主力である男性労働力そのものが縮小しています。 高齢化が進む一方で若年層や女性の参入が進まず、 構造的な人手不足が加速度的に深刻化している状況です。
7.特定技能制度と運送業の関係

深刻な人手不足に対応するため、 2024年3月29日、 政府は特定技能制度の対象分野に「自動車運送業」 を正式に追加することを閣議決定しました。 これは、 制度創設から5年を経て追加された13番目の分野となります。
【受験資格と要件】
項目 | 内容 |
年齢 | 満17歳以上 |
運転免許 | 日本または外国で取得した有効な自動車運転免許を保有 |
国内受験条件 | 適切な在留資格を有していること |
除外条件 | 退去強制令書の執行に非協力的な国の旅券所持者は受験不可 |
【試験実施体制(2024年12月~2025年6月実績)】
項目 | 内容 |
実施機関 | 一般財団法人 日本海事協会 |
実施形式 | CBT方式(コンピュータ・ベースド・テスティング)またはペーパーテスト |
試験内容 | 学科試験+実技試験(判断等試験) |
試験範囲 | 運行業務/荷役業務/安全衛生 |
国内実施 | 43都道府県(東京・大阪・愛知・埼玉に集中) |
海外実施 | 12か国(インドネシア、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、タイ、インド、ネパール、ラオス、ウズベキスタンなど) |
【受験者の地域別割合】
国・地域 | 受験者割合・人数 | 合格率 |
日本国内 | 51%(1,111人) | ― |
インドネシア | 24%(508人) | 58.3% |
ミャンマー | 6%(137人) | 83.9% |
カンボジア | 6%(123人) | 73.2% |
インド | ―(少数) | 90.2% |
8.外国人ドライバー受け入れ時の課題

制度は整いましたが、 現場での受け入れには高いハードルが存在します。 LOGI-BIZ onlineの調査(2025年12月) では、 運送会社の6割以上が特定技能外国人ドライバーの採用に消極的と回答しており、 その理由が以下のデータから明確になります。
言語の壁(最大の課題)
企業が懸念する主な場面:
主な場面 | 内容 |
配送伝票 | 漢字を含む伝票の読み書きが必要 |
業務連絡 | 無線・電話での正確なやり取り |
顧客対応 | 顧客との直接コミュニケーション |
道路標識 | 日本の道路標識の理解 |
緊急対応 | 緊急時の迅速な判断と報告 |
特定技能試験は技能と安全に関する知識を問うものですが、 実務で必要な日本語能力(JLPT N3 ~N2レベル相当) の担保はさ れていません。 このギャップが企業の不安につながっています。
安全性への懸念
具体的な不安要素:
不安要素 | 内容 |
交通ルール・マナー | 日本独自の交通ルールやマナーの理解度 |
左側通行 | 左側通行への慣れ(右側通行国が多い) |
道路環境 | 狭い道路での運転技術 |
事故対応 | 事故発生時の適切な対応能力 |
法的リスク | 責任の所在に関する法的な不安 |
運送会社の調査では、 「運行の安全性」 を懸念する声が最も多く 、 採用をためらう 最大の理由となっています。
採用・ 育成コストの高さ
必要なコスト項目:
コスト項目 | 内容・目安 |
日本語研修費用 | 月5~10万円 × 数か月 |
運転免許の切替 | 手続き費用および所要時間が発生 |
大型・けん引免許 | 取得支援費 30~40万円/人 |
二種免許 | 取得支援費 20~30万円/人(タクシー・バス) |
登録支援機関費 | 月2~3万円/人 |
協議会加入費用 | 自動車運送業分野協議会への加入費 |
OJT人件費 | 研修期間中の人件費負担 |
日本人ドライバー採用の1.5~2倍のコストがかかると試算されています。
文化・ 習慣の違い
受け入れ企業側の対応が必要な項目:
配慮・対応項目 | 内容 |
宗教上の配慮 | 礼拝時間やハラル食品への対応 |
コミュニケーション | 文化による意思疎通スタイルの違い |
報連相文化 | 日本的な「報告・連絡・相談」の理解 |
時間意識 | 時間厳守に対する考え方の違い |
接遇基準 | 顧客対応に求められる丁寧さの水準 |
これらへの対応には、 受け入れ企業側の意識改革と体制整備が不可欠です。
制度・ 手続きの複雑さ
企業が対応すべき手続き:
手続き項目 | 内容 |
在留資格関連 | 在留資格認定証明書の交付申請 |
協議会加入 | 自動車運送業分野特定技能協議会への加入(必須) |
支援体制 | 登録支援機関との契約(自社支援不可の場合) |
定期報告 | 3か月ごとの定期的な報告義務 |
変更届出 | 住所・勤務先・報酬などの変更届出 |
小規模事業者にとって、 これらの手続き負担が大きな障壁となっています。
9.運送業界は将来性がありますか?

運送業界は「2030年問題」 として、 52万人のドライバー不足(野村総合研究所) や輸送能力34%低下(国土交通省) という危機的な予測がなされています。 さらに、 パーソル総合研究所の試算では、 2030年に運輸郵便業で約14万人の労働力不足が見込まれています。
しかし、 これは裏を返せば「需要が決して無く ならない」 ことを意味します。 以下のデータが需要の堅調さを裏付けています。
項目 | 内容 |
EC市場規模 | 2023年度に20兆円超、継続的に拡大中 |
インバウンド需要 | 2025年に訪日外国人約396万人、過去最高を更新 |
国内貨物輸送量 | 2024年10月:航空貨物は国内線+15.1%、国際線+12.4% |
業界では今、 待遇改善の動きが加速しています。 全日本トラック協会の調査(2024年度版) によると、 以下の改善が見られます。
項目 | 2024年度 | 前年度比 |
男性トラック運転手の賃金 | 月額約38万円 | +7.4% |
全職種の平均賃金 | 月額34万1,800円 | +6.7% |
年間賞与込み月額 | 38万8,700円 | +5.5% |
出典: 全日本トラック協会「2024年度版トラック運送事業の賃金・ 労働時間等の
実態」
また、 物流DXや自動運転技術の導入と並行して、 外国人材という新たな労働力を適切に組み込むことができれば、 業界は持続可能な成長軌道に乗る可能性があります。 需要は確実に存在し、 待遇も改善傾向にあるという事実は、 将来性を示す重要な指標です。
10.今後の外国人労働者推移の見通し

政府は特定技能制度全体で、 2024年度からの5年間で82万人の受け入れを見込んでおり、 これは従来目標(2023年度まで: 約34.5万人) の約2.4倍に拡大されています。
制度全体 | 2019~2023年 度目標 | 2024~2029年 度目標 | 拡大率 |
特定技能全体 | 約34.5万人 | 82万人 | 約2.4 倍 |
制度全体 | 2019~2023年 度目標 | 2024~2029年 度目標 | 拡大率 |
自動車運送業 | -(対象外) | 2.45万人 | 新規追加 |
運送業における外国人労働者の推移も、 現在は初期段階(実績10人)ですが、 制度整備と企業の意識変化により、 今後5~10年で段階的に増加していく ことが確実視されています。
先進企業の取り組み事例:
この事例は、 大手企業が本格的に外国人ドライバー導入にシフトしていることを示しており、 今後、 業界全体に波及していく 可能性があります。
【成功のための5つの実践ポイント】
取り組み分野 | 内容 |
多言語対応の体制整備 | マニュアル・伝票・ナビの多言語化/翻訳アプリ・多言語デバイス導入/ピクトグラム活用 |
段階的な育成プログラム | 倉庫作業・助手から開始/日本語学習と免許取得を並行支援/簡易業務から段階的移行/ベテランとのペア制度 |
免許取得の計画的支援 | 教習所提携による費用補助(30~40万円/人)/外国免許切替支援/大型・けん引免許の段階取得 |
安全教育の徹底 | 交通ルール反復研修/ドラレコ活用教育/事故対応マニュアル多言語化/定期安全研修 |
組織文化の変革 | 外国人材をパートナーとして尊重/異文化理解研修/宗教・食習慣への配慮/交流イベント実施 |
2030年に向けた現実的シナリオ:
期間 | 見通し |
2025~2027年 | 大手・中堅企業中心に試験導入が進展、年間1,000~3,000人規模で増加 |
2028~2030年 | 成功事例が中小企業へ拡大、累計1万~1.5万人規模 |
2030年以降 | 特定技能2号や家族帯同も視野に入り、安定的な労働力として定着 |
ただし、 現状の0.04%達成率から目標達成には、 制度の簡素化、 企業の意識改革、 育成支援の充実が不可欠です。 今後の推移は、 これらの課題にどれだけ迅速に対応できるかにかかっています。
11.まとめ:外国人労働者推移と運送業

現在、運送業における外国人労働者の割合は3.3%と全産業の中で最低水準にあります。しかし、2024年の特定技能「自動車運送業」の新設により、法的な受け入れ基盤は整いました。

2030年に予測される深刻なドライバー不足(52万人不足)を回避するためには、外国人材の活用は避けて通れない選択肢です。言語や安全面の課題はありますが、先進企業の事例が示すように、適切な教育体制と受け入れ環境を整えることで、外国人ドライバーは物流の未来を支える重要な戦力となり得ます。

外国人労働者推移のデータが示す「増加トレンド」に、運送業界がどれだけ追随できるか。それが今後の日本の物流網維持の鍵を握っています。








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