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育成就労制度は外国人ドライバー採用にどう影響する?2027年移行で運送会社が備えること

  • 6月19日
  • 読了時間: 25分
育成就労制度は外国人ドライバー採用にどう影響する?2027年移行で運送会社が備えること

「技能実習がなくなると、外国人ドライバーは採用できなくなるのか」

「2027年から始まる育成就労制度を、運送会社も使えるのか」

このような疑問を持つ運送会社の経営者・採用担当者は、かなり多いはずです。


結論から言うと、自動車運送業のドライバー職は、現時点の育成就労制度の主な対象ではなく、当面は特定技能1号が中心ルートになります。

ただし、「育成就労は運送業に関係ない」と切り捨ててしまうのは少し危険です。

なぜなら、育成就労は物流倉庫分野など周辺業務には関わり、将来的な外国人材の母集団づくりや、特定技能への移行設計にも影響してくるからです。


特ドラワークスとしては、2027年を待ってから動くのではなく、今のうちに特定技能ドライバーを受け入れられる社内体制を整えておくことが、運送会社にとって現実的な一手だと考えています。


この記事でわかること      育成就労制度と技能実習廃止の基本    自動車運送業が育成就労でどう扱われるか    特定技能ドライバー採用に必要な準備    2027年に向けて運送会社が整えるべき受入基盤

📋 目次


1.育成就労とは何か


育成就労とは何か

まずは、育成就労制度そのものを整理しておきます。

制度名だけを見ると、「外国人を育てながら働いてもらえる制度」という印象を受けますが、実際には技能実習制度の反省を踏まえた、新しい外国人材受け入れ制度です。

ここでは、2027年移行の基本と、技能実習廃止が運送会社にどのような意味を持つのかを見ていきます。


2027年移行の基本


育成就労制度は、技能実習制度に代わる新しい制度として、2027年4月からの施行が予定されています。


大きな目的は、外国人を日本の人手不足分野で受け入れ、原則3年以内の就労を通じて、特定技能1号相当の技能を持つ人材へ育成することです。


つまり、単に「人手が足りないから来てもらう」だけではなく、「一定期間の中で育て、次の在留資格につなげる」という考え方が制度の中心にあります。


在留資格としては、新しく「育成就労」が設けられます。

技能実習制度では、国際貢献や技能移転という建前がありましたが、実際には人手不足対策として使われている面が強く、現場とのズレが指摘されてきました。


育成就労では、そのズレを整理し、人材確保と人材育成を正面から制度目的に置いた点が大きな違いです。

また、育成就労では、外国人本人が一定の条件を満たすことで転籍できる仕組みも設けられる予定です。


従来の技能実習では、原則として転籍がかなり制限されていたため、労働環境に問題があっても移動しづらいという課題がありました。

育成就労では、本人保護の観点から、一定期間の就労後に同じ分野内で別の受入企業へ移れる余地が設けられます。


補足

育成就労制度の詳細な運用は、施行前後に政省令・告示・分野別運用方針で調整される可能性があります。制度を使う前には、必ず出入国在留管理庁の育成就労制度ページなど公式情報を確認してください。


運送会社が特に押さえるべきなのは、育成就労の対象分野です。

育成就労は、すべての業種で自由に使える制度ではありません。

特定技能制度の対象分野のうち、育成による技能習得が適当とされる分野に限って設定されます。


2026年時点で示されている方針では、物流倉庫分野は対象に含まれる一方で、自動車運送業については「育成就労産業分野の設定はありません」と整理されています


ここが、運送会社にとって一番大事な分岐点です。

同じ物流業界でも、「ドライバー業務」と「倉庫業務」では、制度上の扱いが変わります。

この違いを理解しないまま採用計画を立てると、「育成就労でドライバーを育てられると思っていたのに、実際には使えない」というズレが起きてしまいます。


技能実習廃止の意味


技能実習制度が廃止されると聞くと、「今まで外国人を受け入れていた企業はどうなるのか」と不安になりますよね。ただ、運送業のドライバー職については、もともと技能実習で自由に受け入れられる職種ではありません。


ここを誤解している方が多いのですが、技能実習生をトラックドライバーとして運転業務に就かせることは、原則として想定されていません

そのため、「技能実習廃止によって、外国人ドライバー採用のルートが丸ごと消える」という見方は正確ではありません。


ドライバー採用の本命は、すでに特定技能1号の「自動車運送業分野」に移っています。

2024年に自動車運送業が特定技能に追加されたことで、トラック・タクシー・バスの運転業務で外国人材を受け入れる道が整いました。


詳しい制度の全体像は、特ドラワークスの外国人ドライバーを増やしたい企業向け特定技能ガイドでも整理しています。


一方で、技能実習廃止の影響がまったくないわけではありません。

倉庫、製造、整備、建設、農業など、これまで技能実習で外国人材を受け入れてきた周辺分野では、育成就労への切り替えが進む可能性があります。

物流会社の中には、運送だけでなく、倉庫作業、流通加工、在庫管理、梱包、荷役などを自社で持っている会社もあります。


その場合、ドライバー職そのものではなく、物流倉庫関連業務として育成就労を使える余地が出てきます。


◆ワンポイントアドバイス  運送会社が見るべきポイントは、「自社の仕事が運転業務なのか、倉庫業務なのか」を分けることです。同じ外国人採用でも、ハンドルを握る人材と、倉庫で入出庫を支える人材では、使える制度が変わります。ここを最初に整理しておくと、採用計画の失敗をかなり減らせます。

技能実習廃止は、単なる制度名の変更ではありません。

受入企業には、より明確な育成計画、労働条件の適正化、日本語教育、安全衛生管理、監理支援機関との連携が求められます。

これからの外国人採用では、「とにかく人数を集める」会社よりも、「きちんと育てて定着させる」会社が選ばれていきます。

あなたの会社は、外国人材から見て、安心して働き続けられる職場になっているでしょうか。


2.自動車運送業は対象外か


自動車運送業は対象外か

ここからは、運送会社にとって一番気になる「自動車運送業は育成就労で使えるのか」という点を整理します。

結論はシンプルです。

現時点では、ドライバー職は育成就労ではなく、特定技能1号の自動車運送業分野で考える必要があります。

ただし、倉庫業務を持つ会社では別の見方が必要です。


ドライバー職は特定技能へ


自動車運送業のドライバー職は、育成就労ではなく、特定技能1号での受け入れが中心になります。


これは、運転業務が単なる現場作業ではなく、日本の交通ルール、道路事情、運行管理、安全教育、免許制度と深く関わる仕事だからです。

外国人が日本でトラックドライバーとして働くには、在留資格だけでなく、日本国内で有効な運転免許が必要になります。


さらに、特定技能1号評価試験、日本語試験、受入企業側の要件、協議会加入、支援計画など、複数の条件を満たさなければなりません。

つまり、ドライバー職は「働きながら少しずつ覚えればよい」というより、乗務前に安全面・法令面・免許面の条件をしっかり満たす必要がある仕事です。

このため、育成就労のような3年育成型の枠ではなく、一定の技能と日本語力を確認したうえで就労する特定技能の枠で扱われています。


特定技能「自動車運送業」では、トラック、タクシー、バスの区分があります。

トラック区分では貨物自動車運送事業での運行業務が中心となり、荷役、安全衛生、車両点検なども業務に関わります。


タクシーやバスでは、運転に加えて乗客対応や接遇も重要になります。

同じドライバーでも、求められる日本語力や免許、研修内容が違うため、自社が採用したい区分を間違えないことが大切です。

区分

主な業務

制度上の主なルート

注意点

トラック

貨物運送、荷役、車両点検、安全衛生

特定技能1号

第一種運転免許が必要

タクシー

旅客運送、接遇、乗務記録、安全衛生

特定技能1号

第二種運転免許や接遇力が重要

バス

旅客運送、接遇、定時運行、安全衛生

特定技能1号

第二種運転免許と安全教育が重要

倉庫業務

入出庫、積卸、保管、在庫管理

育成就労・特定技能の対象になり得る

運転業務とは分けて管理が必要

特定技能でドライバーを採用する流れについては、運送業のビザ制度と特定技能の条件を整理した記事も参考になります。


特に重要なのは、外国人本人だけでなく、受入企業側にも条件があることです。

たとえば、必要な事業許可、運行管理体制、安全管理、支援体制、協議会加入などが整っていなければ、制度を使うことは難しくなります。


「人が足りないからすぐ雇いたい」という気持ちはよく分かります。

しかし、外国人ドライバー採用では、焦って候補者を探すよりも先に、自社が受け入れられる状態かを確認することが大切です。


注意点  特定技能や育成就労の対象範囲、試験、日本語要件、協議会加入の扱いは、制度改正や運用変更によって変わる可能性があります。正確な情報は公式サイトをご確認ください。最終的な判断は、行政書士、登録支援機関、監理支援機関などの専門家にご相談ください。

倉庫業務は対象になり得る


ドライバー職そのものは育成就労の中心対象ではありませんが、物流倉庫業務は別です。

物流倉庫分野は、育成就労や特定技能の対象になり得る分野として整理されています。

そのため、運送会社であっても、自社で倉庫業務を行っている場合は、育成就労制度を活用できる可能性があります。


具体的には、入庫、出庫、積卸、保管、仕分け、在庫管理、ピッキング、梱包、流通加工などの業務が考えられます。

ただし、ここで大切なのは、倉庫業務で受け入れた外国人を、そのままドライバーとして運転業務に就かせることはできないという点です。

在留資格で認められている活動範囲を超えて働かせると、不法就労助長に問われるおそれがあります。


これは会社にとって非常に大きなリスクです。

倉庫人材として受け入れるなら、倉庫人材としての育成計画、業務範囲、指導体制、評価方法を明確にする必要があります。


また、物流倉庫業務では、作業の正確性と安全性が欠かせません。

入出庫ミス、誤出荷、在庫差異、フォークリフト周辺の事故などは、現場の信用に直結します。

そのため、外国人材を受け入れる場合は、作業手順を日本語だけでなく、やさしい日本語、図、写真、動画などで伝える工夫が必要です。


倉庫管理システムを使っている会社であれば、端末操作、バーコード読み取り、ロケーション管理、出荷指示の確認なども教育対象になります。

現場でよくあるのが、「見て覚えて」という教え方です。

日本人同士なら何となく通じることもありますが、外国人材には通じにくい場面が多くなります。だからこそ、育成就労を使う会社ほど、仕事の見える化が重要になります。


倉庫業務で準備したいこと  作業手順書、教育担当者、やさしい日本語のマニュアル、安全衛生教育、在庫管理ルール、相談窓口、勤怠管理、住居・生活支援の体制を先に整えておくことが重要です。

もうひとつ大事なのは、倉庫人材から将来的にドライバーへ移行できるかという視点です。

制度上、倉庫業務の育成就労から、すぐに自動車運送業の特定技能ドライバーへ一本道で移れるとは限りません。

業務分野が異なる場合、試験、日本語、免許、在留資格変更の条件を個別に満たす必要があります。


しかし、物流現場を理解した外国人材が日本語力を高め、免許取得を進め、将来的に特定技能ドライバーを目指すというキャリア設計は、現実的な選択肢になり得ます。

ここは「制度上できるか」だけでなく、「人材育成として自然か」という視点で考えるべきです。



3.特定技能への移行実務


特定技能への移行実務

育成就労制度の目的のひとつは、一定期間の育成を経て特定技能1号へ移行することです。

ただし、自動車運送業のドライバー職については、育成就労からそのまま移るというより、特定技能の要件を満たして採用する考え方が中心になります。

ここでは、外国人ドライバー採用で避けて通れない日本語、免許、試験、受入枠について整理します。


必要な日本語と免許


外国人ドライバー採用で、もっとも現場に影響するのが日本語と免許です。

特定技能ドライバーは、単に日本語試験に合格すればよいわけではありません。

運転中の指示、荷主とのやり取り、点呼、運行管理者からの注意、事故時の報告、道路標識、納品先での確認など、毎日の業務で日本語を使います。

トラック区分では、一般的に日本語能力試験N4相当または国際交流基金日本語基礎テストなどが目安になります。

一方、タクシーやバスでは乗客対応が入るため、より高い日本語力が求められる場面があります。


制度上の最低ラインと、実際に安全に働けるラインは同じではありません。

私はここを、運送会社がかなり慎重に見るべきだと考えています。

たとえば、試験には合格していても、点呼での受け答えが不安定だったり、荷主の指示を聞き返せなかったりすると、現場では不安が残ります。

外国人本人に悪気がなくても、聞き違い、思い込み、確認不足が事故やクレームにつながることがあります。


だからこそ、採用時には「日本語試験に受かっているか」だけでなく、運送現場で使う日本語をどれだけ理解できるかを確認することが重要です。


免許についても同じです。

外国人が日本でトラックドライバーとして就労するには、日本国内で有効な第一種運転免許が必要です。

中型や大型が必要な業務であれば、その車両に合った免許が必要になります。

海外で運転経験があっても、日本の免許がなければ日本で業務として運転することはできません。


外免切替を使う場合でも、国や地域、書類、滞在履歴、試験、技能確認などの条件があります。また、制度や運用が厳格化されると、免許取得までの期間が読みにくくなることもあります。

特定活動55号のように、特定技能に移行する前の準備期間を使って日本の免許取得を進めるルートもありますが、期間には上限があります。


このあたりは、特定活動55号と免許取得期間を解説した記事で詳しく整理しています。


免許取得は採用計画の中心です  外国人本人が試験に合格していても、日本の運転免許を取得できなければ乗務開始できません。採用予定日から逆算して、外免切替、教習所、技能試験、書類準備の期間を見込む必要があります。費用や期間は地域・本人の経験・教習環境によって変わるため、あくまで一般的な目安として考えてください。

運送会社としては、入社後に日本語と免許を本人任せにしないことが大切です。

会社が支援できる範囲を明確にし、学習時間、研修担当、費用負担、再試験時の対応、乗務開始までの業務内容を決めておく必要があります。


外国人ドライバー採用は、採用して終わりではありません。

採用してから乗務開始までの設計こそが、成功率を左右します。


試験と受入枠の確認


特定技能で外国人ドライバーを受け入れるには、本人が自動車運送業分野の特定技能1号評価試験に合格する必要があります。

試験は、トラック、タクシー、バスの区分ごとに分かれます。

採用したい業務と合格した試験区分が合っていなければ、受け入れはできません。

トラックで採用するならトラック区分、バスで採用するならバス区分、タクシーで採用するならタクシー区分です。


この区分の違いは、求人票を出す段階から意識しておく必要があります。

「ドライバーなら何でもよい」という募集では、あとで制度上のズレが起きます。

試験の内容には、運行業務、安全衛生、関連法令、業務上必要な知識などが含まれます。

単に運転がうまいだけではなく、日本の運送業で安全に働くための基本を理解しているかが問われます。


また、日本語試験も必要です。

トラック区分ではN4相当が目安になることが多いですが、業務内容や運用変更によって求められる水準が変わる可能性もあります。

最新の試験情報は、必ず公式情報で確認してください。

受入枠についても見ておく必要があります。

自動車運送業分野は、2024年の分野追加時に、一定期間の受入見込み数が設定されています。


受入見込み数は、制度上の上限管理や人手不足見込みと関係するため、採用市場の動きを見るうえで重要です。

ただし、受入枠があるからといって、すぐに必要な人数を採用できるわけではありません。

実際には、試験合格者、日本語力、免許取得、候補者の希望、企業側の支援体制、地域の住環境など、いくつもの条件が重なります。


特定技能ドライバーの制度や要件を基礎から確認したい場合は、特定技能ドライバーの制度や要件をやさしく解説した記事もあわせてご覧ください。

確認項目

見るべきポイント

企業側の準備

技能評価試験

トラック・タクシー・バスの区分が合っているか

採用したい業務区分を明確にする

日本語試験

制度上の水準と現場で必要な会話力

面接時に業務日本語を確認する

運転免許

日本国内で有効な免許を取得できるか

外免切替や教習計画を支援する

受入企業要件

許可、認証、協議会、支援体制

申請前に社内体制を整える

受入枠

分野ごとの受入見込み数と運用状況

公式情報を定期確認する

試験に合格している人材は、今後少しずつ増えていくと考えられます。

ただし、制度開始直後の分野では、候補者数が急に十分になるとは限りません。

特に地方の中小運送会社では、条件のよい都市部や大手物流会社と人材獲得で競合する可能性があります。

だからこそ、「合格者が増えてから採用する」のではなく、「合格者に選ばれる会社になる」準備が必要です。



4.運送会社への主な影響


運送会社への主な影響

育成就労制度の創設は、ドライバー職に直接使える制度ではないとしても、運送会社の外国人採用に間接的な影響を与えます。

特に、採用母集団、倉庫人材、地方事業者の受入環境には注意が必要です。

ここからは、2027年以降に運送会社が受ける可能性のある影響を、実務目線で整理します。


採用母集団の変化


育成就労制度が始まると、日本で働く外国人材の流れは少し変わっていきます。

技能実習から育成就労へ移行することで、制度上は「育てて、特定技能へつなげる」流れが強くなります。


これは、運送会社にとっても無関係ではありません。

ドライバー職が育成就労の対象外であっても、他分野で育成就労として日本に入った外国人が、将来的に別の分野の特定技能を目指す可能性があるからです。

もちろん、分野をまたぐ移行には条件があります。

試験、日本語、免許、在留資格変更、本人の希望、制度上の適合性を満たさなければなりません。


しかし、日本での生活経験があり、職場文化を知っていて、基礎的な日本語力を持つ外国人材は、運送会社にとって将来の候補者になり得ます。

特に、物流倉庫、製造、整備、建設などで働いた経験がある人材は、時間管理、安全意識、現場ルールへの理解がある程度育っている可能性があります。

こうした人材が、特定技能ドライバーの試験や免許取得に挑戦する流れができれば、運送業界の採用母集団は少し広がります。


ただし、これは自動的に起きるわけではありません。

運送会社側が、外国人材にとって魅力のある職場をつくり、教育支援や免許取得支援を整えなければ、候補者は集まりません。

外国人材から見れば、運送会社は選択肢のひとつです。

製造業、介護、外食、宿泊、建設など、他の業界も外国人材を必要としています。

その中で運送会社が選ばれるには、給与だけでなく、労働時間、休み、住まい、教育、安全管理、職場の人間関係まで含めた安心感が必要です。


採用母集団を広げる考え方  「海外から直接採用する」だけでなく、「すでに日本で働いている外国人材」「物流倉庫で経験を積んだ人材」「免許取得を目指す人材」も将来の候補として見ておくと、採用の選択肢が広がります。

特定技能の候補者が増えるまで待つ会社と、今から教育体制を作る会社。

数年後に差が出るのは、後者だと私は感じています。


倉庫人材の活用余地


運送会社の中には、ドライバー不足だけでなく、倉庫作業員不足にも悩んでいる会社があります。

入出庫、仕分け、検品、積込み補助、在庫管理などの人手が足りないと、ドライバーの待機時間が増え、配送効率にも影響します。

この意味で、物流倉庫分野で育成就労を活用できる可能性は、運送会社にとって大きな意味を持ちます。


ドライバーを直接増やす制度ではなくても、倉庫内の作業体制を整えることで、ドライバーの負担を軽くできるからです。

たとえば、積込み前の仕分けが遅い、ピッキングミスが多い、在庫確認に時間がかかる、荷待ち時間が長い。

こうした問題は、ドライバー不足とは別に見えて、実は運送会社の生産性を大きく下げています。


倉庫人材を育成し、入出庫や保管管理を安定させることは、結果として運行効率の改善につながります。

ただし、倉庫人材の受け入れにも準備が必要です。

特に、作業範囲を明確にすることが欠かせません。

育成就労で倉庫業務として受け入れた外国人に、繁忙期だけ配送を手伝わせるような運用は危険です。


制度で認められた範囲を超えないよう、配置、勤怠、作業指示、教育記録を管理する必要があります。

また、倉庫業務は安全面のリスクもあります。

フォークリフト、パレット、重量物、ラック、高所作業、トラックバース周辺など、事故につながる場所が多いからです。

外国人材を受け入れるなら、安全教育を「一度説明して終わり」にしてはいけません。

繰り返し確認し、理解度をチェックし、現場で声をかける仕組みが必要です。



倉庫人材の活用は、ドライバー採用の代わりではありません。

しかし、配送全体の流れを整えるための重要な打ち手です。

運送会社が外国人採用を考えるなら、ドライバーだけでなく、倉庫・点呼・教育・事務の全体設計を見る必要があります。


地方事業者の課題


地方の運送会社にとって、外国人採用は大きな可能性である一方、課題も多くあります。

都市部に比べて、住まい、交通、生活支援、日本語学校、医療機関、多文化対応の相談窓口などが少ない地域もあります。


外国人本人にとっては、仕事だけでなく生活全体が不安になります。

特に運送業では、勤務時間が早朝や深夜にかかることもあります。

公共交通が少ない地域では、通勤手段の確保も課題になります。

会社の寮があるのか、自転車や社用車の利用はできるのか、買い物や病院に行けるのか。

こうした生活面の準備が不十分だと、採用できても定着しません。


また、地方の中小運送会社では、外国人採用を担当する専任者がいないケースも多いです。

社長、配車担当、総務担当が本業の合間に対応する形になりがちです。

しかし、特定技能では支援計画、日本語教育、生活オリエンテーション、相談対応、定期面談などが必要になります。


すべてを片手間で行うのは現実的ではありません。

そのため、登録支援機関や専門家との連携が重要になります。

ただし、支援機関に任せればすべて解決するわけで

はありません。

日々一緒に働くのは会社の現場です。

点呼で声をかける人、横乗りで指導する人、ミスを注意する人、困りごとを聞く人は、会社側に必要です。

地方企業ほど、受け入れ人数を一気に増やすより、まず1名から2名を丁寧に受け入れ、社内に経験を蓄積するほうが安定します。


地方事業者が見落としやすい点

採用条件だけでなく、住居、通勤、買い物、病院、銀行口座、携帯電話、日本語学習、地域との関係まで見ておく必要があります。外国人材は「会社」だけでなく「地域」で暮らすからです。

地方だから外国人採用が難しい、というわけではありません。

むしろ、職場の距離が近く、面倒見のよい会社であれば、外国人材にとって働きやすい環境になることもあります。

大切なのは、「採用したら何とかなる」ではなく、「暮らしと仕事を支える仕組みを先に作る」ことです。



5.今から整える受入基盤


今から整える受入基盤

2027年の育成就労創設を見据えるなら、運送会社が今やるべきことは明確です。

それは、育成就労をドライバー採用に直接使えるかどうかを待つことではありません。

特定技能ドライバーを安全に、合法的に、長く受け入れられる基盤を整えることです。

ここでは、教育・安全管理と、支援機関の選び方を中心に整理します。


教育と安全管理の設計


外国人ドライバー採用で最も重要なのは、安全です。

これはきれいごとではありません。

運送業は、ひとつの判断ミスが事故につながる仕事です。

外国人であっても、日本人であっても、安全教育を軽く見る会社は、長期的に採用を続けられません。


まず整えるべきは、乗務開始前の教育です。

日本の交通ルール、標識、右左折時の注意、積載ルール、荷崩れ防止、点呼、アルコールチェック、日報、事故時の連絡、荷主対応などを、順番に教える必要があります。

特に外国人材には、専門用語をやさしい日本語に置き換える工夫が必要です。


「積載」「拘束時間」「点呼」「日常点検」「荷締め」「休息期間」といった言葉は、日本人には当たり前でも、外国人材には難しく感じることがあります。

言葉が分からないまま現場に出ると、本人も不安ですし、会社も危険です。

教育資料は、文章だけでなく、写真、図、動画を使うと理解しやすくなります。

また、教えた内容を記録することも大切です。

いつ、誰が、何を教えたのか。

本人が理解したか。

再確認が必要な項目は何か。


こうした記録が残っていると、社内教育の質が上がるだけでなく、万が一のトラブル時にも説明しやすくなります。


次に、配属後のフォローです。

外国人ドライバーは、免許を取って乗務を始めてからが本番です。

最初の数か月は、運行ルート、荷主ごとのルール、納品先での対応、休憩場所、交通量の多い道、狭い道、積込み時の注意など、覚えることが多くなります。


この時期に放置すると、本人の不安が大きくなり、ミスや早期離職につながります。

横乗り研修、定期面談、運行後の振り返り、困りごとの聞き取りをセットで設計しておきましょう。

教育項目

具体的な内容

実施のポイント

交通ルール

標識、速度、車線、交差点、歩行者対応

動画や地図を使って説明する

運行管理

点呼、日報、休憩、アルコールチェック

毎日の流れを手順化する

荷役・積載

積付け、荷締め、荷崩れ防止、検品

現場で実演して確認する

日本語

点呼用語、荷主対応、事故報告

業務で使う表現に絞って教える

生活支援

住居、通勤、病院、銀行、相談窓口

入社前から準備する

安全管理では、外国人だから特別扱いするのではなく、分からないことを確認しやすい環境を作ることが大切です。

「分からなかったら聞いて」と言うだけでは足りません。

外国人材の中には、迷惑をかけたくなくて質問を遠慮する人もいます。

だからこそ、会社側から「ここは分かりましたか」「もう一度一緒に確認しましょう」と声をかける文化が必要です。


安全教育は、採用コストではなく、事故を防ぐ投資です。

ここに手を抜かない会社ほど、外国人ドライバーの定着率も高くなります。


支援機関の選び方


特定技能で外国人ドライバーを受け入れる場合、登録支援機関を使う会社も多くなります。

また、育成就労では監理支援機関の関与が想定されます。

制度名や役割は違っても、共通して大切なのは、運送業の実務を理解している支援先を選ぶことです。


外国人採用の支援機関ならどこでもよい、というわけではありません。

運送業には、免許、点呼、運行管理、拘束時間、荷主対応、事故対応、車両区分、営業所単位の管理など、独自の注意点があります。

これらを理解していない支援先だと、書類は進んでも現場でつまずくことがあります。

支援機関を選ぶときは、次のような点を確認してください。


自動車運送業分野の特定技能に対応した実績があるか    トラック・タクシー・バスの区分差を理解しているか    免許取得や外免切替の流れを説明できるか    日本語教育や生活支援まで対応できるか    採用後の定着支援まで関わってくれるか

費用だけで選ぶのはおすすめしません。

もちろん、支援費用は会社にとって重要です。

しかし、安さだけで選んでしまうと、候補者との連絡が遅い、制度説明が浅い、トラブル時に動いてくれない、運送業の現場を理解していない、といった問題が起きることがあります。


外国人ドライバー採用は、紹介して終わりではありません。

むしろ、入社してからが本番です。

支援機関には、採用前の説明、在留資格申請、生活支援、日本語学習、定期面談、トラブル対応、更新手続きまで、長く関わってもらうことになります。

だからこそ、会社側も「丸投げ」ではなく、支援機関と役割分担を決める必要があります。


支援機関選びの本質  見るべきは、費用の安さだけではありません。運送業の制度理解、候補者への説明力、免許取得支援、採用後の伴走力、トラブル時の対応力を総合的に確認することが大切です。

また、支援機関との契約前には、どこまでが費用に含まれるのかを確認しましょう。

候補者紹介、在留資格申請の補助、空港送迎、住居契約支援、銀行口座開設、携帯電話契約、日本語教育、定期面談、通訳対応など、支援内容は会社によって差があります。

「やってくれると思っていた」ではなく、契約前に書面で確認することが重要です。

最終的には、支援機関と会社が同じ方向を向けるかどうかです。


外国人材を単なる労働力として見るのではなく、会社の一員として育てる姿勢があるか。

その姿勢を共有できる支援先を選んでください。


育成就労と運送業に関するよくある質問(FAQ)


Q1. 育成就労制度で外国人ドライバーを採用できますか?


A. 現時点では、自動車運送業のドライバー職は育成就労の中心対象ではなく、特定技能1号「自動車運送業分野」での採用が基本になります。物流倉庫業務は育成就労の対象になり得ますが、その人材をそのまま運転業務に就かせることはできません。制度の対象範囲は変更される可能性があるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。


Q2. 技能実習廃止で運送業の外国人採用は難しくなりますか?


A. ドライバー職については、もともと技能実習で自由に受け入れる職種ではないため、技能実習廃止で採用ルートが完全に消えるわけではありません。今後も特定技能1号が主な受け入れルートになります。ただし、周辺分野の外国人材の流れは変わるため、採用母集団や教育体制には影響が出る可能性があります。


Q3. 倉庫業務で育成就労を使い、将来ドライバーにできますか?


A. 倉庫業務で育成就労として受け入れた外国人を、制度上認められていない運転業務に従事させることはできません。将来的にドライバーを目指す場合でも、自動車運送業分野の特定技能評価試験、日本語要件、日本の運転免許などを別途満たす必要があります。個別の在留資格変更については、専門家に相談してください。


Q4. 外国人ドライバー採用はいつから準備すべきですか?


A. できれば今から準備すべきです。特定技能ドライバー採用では、候補者探し、試験、日本語、免許取得、在留資格申請、住居準備、社内教育まで時間がかかります。採用開始から乗務開始までの期間は、本人の状況や地域によって大きく変わるため、あくまで一般的な目安として余裕を持って計画してください。


Q5. 中小運送会社でも特定技能ドライバーを受け入れられますか?


A. 条件を満たせば中小運送会社でも受け入れは可能です。ただし、支援体制、安全教育、免許取得支援、生活支援、協議会加入などの準備が必要です。人数を一気に増やすより、まずは少人数から受け入れ、社内に教育と支援の型を作ることをおすすめします。最終的な判断は、登録支援機関や行政書士など専門家にご相談ください。



6.まとめ


まとめ

育成就労制度は、2027年から技能実習制度に代わって始まる新しい外国人材受け入れ制度です。

しかし、運送会社が最も知っておくべき結論は、自動車運送業のドライバー職は、当面は育成就労ではなく特定技能1号が主軸になるということです。

一方で、物流倉庫業務は育成就労の対象になり得るため、倉庫を持つ運送会社にとっては、ドライバー以外の人材確保策として活用余地があります。


また、育成就労によって日本で働く外国人材の流れが変われば、将来的に特定技能ドライバーを目指す人材の母集団にも影響してきます。

だからこそ、「育成就労はドライバーに使えないから関係ない」と考えるのではなく、制度全体の方向性を見ながら、特定技能での受け入れ基盤を先に作っておくことが重要です。


運送会社が今から備えること

  • 自社の採用対象がドライバー職か倉庫業務かを整理する

  • 特定技能ドライバーの要件と受入企業側の条件を確認する

  • 日本語教育・免許取得・安全教育の体制を整える

  • 登録支援機関や専門家との連携先を決めておく

  • 住居・通勤・生活支援まで含めた定着設計を作る


外国人ドライバー採用は、短期的な人手不足対策であると同時に、会社の未来を支える採用戦略でもあります。

制度を正しく理解し、現場に合った形で準備できる会社は、2027年以降も人材確保で一歩先に進めます。


あなたの会社は、外国人材を迎える準備ができているでしょうか。

まずは、自社の業務範囲、採用したい人材、教育体制、支援体制を一つずつ確認するところから始めてください。



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