top of page

外国人ドライバーと労働基準法|運送会社が絶対に押さえるべき7つのルール【2026年最新版】

  • 3月19日
  • 読了時間: 11分
外国人ドライバーと労働基準法|運送会社が絶対に押さえるべき7つのルール【2026年最新版】
「外国人ドライバーには、日本人より低い給料を払っても問題ないのでは?」
「労働基準法は日本人の話だから、外国人スタッフへの適用は関係ない……

そのような認識のまま採用に踏み切ると、在留資格の申請が不許可になるだけでなく、刑事罰(懲役・罰金)を受けるリスクがあります。厚生労働省の調査(2024年)では、特定技能外国人を雇用している事業場の76.4%で何らかの労働基準法令違反が確認されています。


本記事では、外国人ドライバー(特定技能・自動車運送業)の採用を検討中、または既に採用している運送会社の担当者向けに、労働基準法の適用範囲から、運送業固有の「改善基準告示」、特定技能の受入要件との連動まで、図解を交えてわかりやすく解説します。


この記事の目次



1.大前提:外国人ドライバーにも労働基準法は「完全適用」される


大前提:外国人ドライバーにも労働基準法は「完全適用」される

まず押さえておきたい絶対的な原則があります。労働基準法は、日本で働くすべての労働者に国籍を問わず適用されます。外国人だから適用外、というルールは存在しません。


法律の条文で確認する


労働基準法には、外国人労働者の保護を明確に定めた条文が置かれています。


📜 労働基準法 第3条(均等待遇)  「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」

労働基準法 第9条(労働者の定義)  「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」

第9条の定義には「国籍」の制限がありません。つまり、フィリピン国籍であれ、ベトナム国籍であれ、あなたの会社で雇用され、賃金を受け取るドライバーは全員が「労働者」として保護されます。そして第3条が、その労働者に対する国籍を理由とした差別的取扱いを明確に禁じているのです。


さらに重要なのは、在留資格の有無にかかわらず適用されるという点です。仮に不法就労の状態であっても、労働実態があれば労働基準法の保護を受けます。これが日本の労働法の原則です。



図解①日本人ドライバーと外国人ドライバー:労働基準法の適用比較

法律・制度

日本人ドライバー

外国人ドライバー


(特定技能)

労働基準法(賃金・労働時間・休日)

適用

完全適用

国籍を理由とした差別禁止(第3条)

差別禁止

最低賃金法

適用

適用

改善基準告示(運送業特有)

適用

適用

社会保険・雇用保険

加入義務

加入義務

年次有給休暇の付与

義務

義務

外国人であることを理由とした減給

違法・禁止

※出典:労働基準法第3条・第9条、特定技能基準省令等を基に特ドラWORKS編集部作成


よくある誤解:「外国人だから安くてもいい」は違法です


「日本語ができないから」「まだ慣れていないから」という理由で、同じ仕事をしている日本人より低い賃金を設定することは、労働基準法第3条違反になります。違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法第119条)が科せられる場合があります。



2.運送業だけに課される「改善基準告示」2024年改正版


運送業だけに課される「改善基準告示」2024年改正版

労働基準法の一般ルールに加えて、トラック・バス・タクシードライバーには「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)という運送業固有の規制が上乗せされています。2024年4月1日から改正版が施行されており、外国人ドライバーにも当然適用されます。


この告示を守れない事業者は、特定技能外国人の受入要件を満たさなくなり、在留資格の更新停止・新規受入停止につながります。改正内容を正確に把握しておきましょう。


① 拘束時間のルール


「拘束時間」とは、始業から終業まで(休憩を含む)の時間を指します。プライベートな時間が保障されるよう、上限が設定されています。


図解②改善基準告示(2024年改正)早わかりガイド  ▼ 1日の働き方イメージ(原則)  拘束時間 13時間 以内 (例外最大15時間) 休息期間 11時間 以上 (原則・最低9時間) ※拘束13h+休息11h=24h(1日サイクルのモデル)  ▼ 主な規制数値(2024年4月〜)  3,300 時間以内/年 年間拘束時間の上限 (例外:労使協定で最大3,400h) 284 時間以内/月 月間拘束時間の上限 (例外:年6か月まで310h) 11 時間以上 勤務終了後の休息期間 (原則。最低9時間) 4 時間以内 連続運転時間の上限 (10分以上の中断が必要) 9 時間以内/日 2日平均の運転時間 (1日あたり) 44 時間以内/週 2週平均の運転時間 (1週あたり) 出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」

② 「手待ち時間」も労働時間に含まれる


荷物の積み降ろし待ちの「荷待ち時間」は、ドライバーが自由に使える時間ではありません。荷待ち時間は原則として労働時間(拘束時間)に算入されます。「荷待ちだから時間外にならない」という誤った運用は、改善基準告示違反になりますので注意してください。


✅ 外国人ドライバーへの運用ポイント


外国人ドライバーは日本語での運行指示書や点呼に不慣れな場合があります。改善基準告示を守るためにも、多言語での運行管理マニュアルを整備し、始業・終業時刻・休憩時間を明確に記録することが重要です。記録の不備は、それ自体が監督署の是正指導対象になります。




3.時間外労働の上限規制(年960時間)と2024年問題


時間外労働の上限規制(年960時間)と2024年問題

2024年4月、ドライバーにも「時間外労働の上限規制」が適用されました。これがいわゆる「物流の2024年問題」の核心部分です。特定技能外国人も含め、すべてのドライバーが対象です。


上限規制の内容


特別条項付き36協定を締結した場合でも、ドライバーの時間外労働は年間960時間(休日労働を除く)を超えてはなりません。これは一般業種(年720時間)よりも高い上限ですが、その分、改善基準告示(拘束時間・休息期間)による制約も上乗せされます。


図解③業種別・時間外労働の上限規制比較(2024年4月〜)  ドライバー (運送業) 年960時間 一般業種 (特別条項あり) 年720時間 一般業種 (原則) 年360時間 ▶ 年960時間 ÷ 12か月 = 月平均80時間(休日労働含まず) ▶ ただし改善基準告示の月間拘束時間上限(284時間)も同時に遵守が必要  出典:厚生労働省「自動車運転業務における時間外労働の上限規制」

外国人ドライバー採用と2024年問題の関係


2024年問題により時間外労働が制限された結果、多くの運送会社では必要な輸送量を確保するためにドライバー数を増やす必要が生じています。外国人ドライバー(特定技能)の採用増加は、この問題への直接的な解決策のひとつです。


ただし、外国人ドライバーも全く同じ時間外規制の対象です。「外国人なら長く働かせられる」という誤解は絶対に禁物です。むしろ、適正な労働時間管理ができる体制を整えた上で採用することが、受入継続の条件でもあります。



⚠️ 36協定の締結を忘れずに


時間外労働・休日労働をさせるためには、事前に「36協定」(労使協定)を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。協定を締結しないまま時間外労働をさせると、それ自体が労基法違反です。特定技能外国人の雇用開始前に必ず確認してください。



4.賃金ルール:同一労働同一賃金と最低賃金



賃金ルール:同一労働同一賃金と最低賃金

外国人ドライバーの賃金設定は、特定技能ビザの審査で最もチェックされるポイントのひとつです。「最低賃金を上回っているからOK」ではなく、「日本人労働者と同等以上か」という比較審査が行われます。


① 同一労働同一賃金の原則


2020年施行のパートタイム・有期雇用労働法の改正により、同一労働同一賃金の原則は外国人労働者にも適用されます。国籍にかかわらず、同じ仕事・同じスキル・同じ経験年数であれば、同等の賃金が支払われるべきです。

特定技能制度においては、在留資格申請の際に「同等の業務に従事する日本人労働者の賃金台帳」の提出が求められます。そこで日本人より低い賃金であれば、審査段階で不許可になります。


② 最低賃金のルール(2025年10月改定版)


外国人労働者にも当然、地域別最低賃金法が適用されます。2025年10月の改定で全国加重平均は時給1,121円となり、すべての都道府県で時給1,000円を超えました。運送業における特定産業別最低賃金の設定はほぼないため、実務上は各都道府県の地域別最低賃金が基準となります。


図解④外国人ドライバー 賃金設定フローチャート  STEP 1|各都道府県の地域別最低賃金を確認する ↓ STEP 2|社内の日本人ドライバーの賃金台帳を確認する (同一職種・同程度の経験年数の人を基準に) ↓ STEP 3|日本人ドライバーと同等以上の賃金を設定する (最低賃金ギリギリではなく、実態比較が必要) ↓ ✅ 同等以上 → 雇用条件書に明記 → 申請可 ❌ 日本人より低い → 賃金を再設定 → 申請は不許可リスク 出典:特定技能基準省令・最低賃金法を基に特ドラWORKS編集部作成

③ 賃金支払いの5原則(第24条)


外国人ドライバーへの賃金支払いにも、労働基準法第24条に定められた「賃金支払いの5原則」が適用されます。送金手数料を賃金から天引きするなど、外国人雇用特有のトラブルも起きていますので注意が必要です。

原則

内容

外国人雇用でありがちなNG例

①通貨払い

日本円の現金または銀行振込

本人の同意なく外貨で支払う

②直接払い

本人に直接支払う

送り出し機関や仲介業者に渡す

③全額払い

控除は法令または労使協定のものだけ

寮費・食費を無断で天引きする

④毎月1回以上払い

毎月少なくとも1回支払う

「来月まとめて払う」は違法

⑤一定期日払い

決まった日に支払う

会社都合で支払日を変更する



5.特定技能の受入要件と労基法遵守は「一体」


特定技能の受入要件と労基法遵守は「一体」

「特定技能と労働基準法は別の話」と思われがちですが、実は特定技能の受入要件そのものに「労基法を遵守していること」が組み込まれています。つまり、労基法を守れていない会社は、特定技能の申請・更新ができなくなります。


① 欠格事由として直結する労基法違反


特定技能基準省令には、以下の欠格事由が定められています。

  • 直近1年以内に会社都合による解雇をおこなっていないこと

  • 過去5年以内に出入国・労働に関する法令に違反し罰金刑以上を受けていないこと

  • 社会保険料・税金の未納がないこと

  • 労働基準法・最低賃金法等の重大な違反実績がないこと


② 自動車運送業固有の要件:認証制度


自動車運送業の特定技能においては、一般の業種に加えて「安全性・職場環境の認証」の取得が必須となります。以下のどちらかを保有していなければ受入れができません。


図解⑤特定技能(自動車運送業)受入要件チェックリスト

要件

内容・補足

根拠

3年以上の事業実績

一般貨物自動車運送事業の許可取得から3年以上が経過していること

国交省基準

Gマーク または 働きやすい職場認証(一つ星以上)

どちらか一方の取得が必須。Gマーク未取得企業は「働きやすい職場認証」で対応可

国交省基準

協議会への加入

「自動車運送業分野特定技能協議会」に申請前に加入(国土交通省が設置)

国交省告示

過去1年以内の不当解雇なし

会社都合による解雇や雇い止めがないこと

特定技能基準省令

過去5年以内の重大な法令違反なし

入管法・労基法・最低賃金法等で罰金刑以上を受けていないこと

特定技能基準省令

社会保険・税金の完納

健康保険・厚生年金・雇用保険・税金に未納がないこと

入管法

改善基準告示の遵守体制

2024年4月改正版の改善基準告示に対応したシフト・運行管理ができていること

国交省基準

10項目の支援計画の策定・実施

特定技能1号の外国人に対する生活支援・日本語学習支援等。登録支援機関への委託も可

入管法・支援計画省令

編集部作成


③ 協議会への加入手続き


「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入は、2025年1月17日より受付が開始されました。受入企業(特定技能所属機関)は【第1号様式】を使い、国土交通省のWebフォームから申請します。審査に1か月程度かかるため、余裕を持って申請することが重要です。





6.実際に起きた違反事例と処罰


実際に起きた違反事例と処罰

「うちのような中小運送会社まで調査は来ないだろう」という考えは危険です。厚生労働省は特定技能外国人を雇用している事業場を重点的に監督指導しており、違反が見つかれば是正指導・公表・刑事告発の対象となります。


出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)2025年11月号|監督指導実施年:2024年


よくある違反内容ランキング(特定技能外国人の事業場)


図解⑥特定技能事業場における労基法違反TOP5(2024年監督指導結果)  1 安全基準の不備  機械・車両を安全に使用するための措置を講じていない  24.0% 2 割増賃金の未払い  残業代・休日手当の全部または一部を支払っていない  17.2% 3 健康診断後の医師意見聴取なし  健康診断で異常所見があった際の医師への意見聴取を実施していない  16.7% 4 労働時間の違反(36協定超え等)  36協定未締結・協定範囲を超える時間外労働をさせている  15.4% 5 年次有給休暇の未付与  法定の有給休暇を付与していない・付与日数が不足している  12.2% 出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)2025年11月号を基に特ドラWORKS編集部作成

過去の重大事例:過労運転が生んだ刑事責任


労基法違反が直接、刑事責任につながった重大事例も存在します。外国人・日本人を問わず、運行管理の失敗は取り返しのつかない結果を招きます。


🚨 事例①:スキーツアーバス過労事故(大阪地裁 2008年)


バス会社の代表取締役と運行管理者が、ドライバーに違法な時間外労働をさせたうえで過労運転を命じた結果、事故が発生。乗務員1名が死亡、乗客25名が負傷。→ 代表取締役:懲役1年、運行管理者:懲役10か月、法人:罰金50万円


事例②:高速道路追突事故(広島地裁 2016年)


過労状態のドライバーに運行管理者が運転を命じた結果、高速道路で停車車両に追突し複数の死傷者が発生。→ 運行管理者:懲役1年6か月(執行猶予3年)、法人:罰金50万円


これらの事例は日本人ドライバーが関わるものですが、外国人ドライバーが同様の状況に置かれた場合も、責任を問われるのは雇用側の経営者・運行管理者です。外国語対応の運行指示、十分な休息確保は、経営リスク管理の観点からも不可欠です。



7.今すぐ使える!実務チェックリスト10項目


今すぐ使える!実務チェックリスト10項目

外国人ドライバーの採用において、労務管理の落とし穴にはまらないための実務チェックリストをまとめました。採用前・採用時・採用後の3フェーズに分けて確認することで、見落としを防げます。


図解⑦採用前〜採用後:外国人ドライバー労務管理ロードマップ  採用前の準備 ビザ申請前までに完了すること 1 地域別最低賃金の確認と賃金設定(日本人同等以上) 2 36協定の締結・労基署への届出 3 Gマーク or 働きやすい職場認証(一つ星以上)の取得確認 4 自動車運送業分野特定技能協議会への加入申請(1か月前目安) 採用時の手続き 雇用開始日までに完了すること 5 労働条件通知書の交付(多言語版推奨)厚労省モデル様式↗ 6 社会保険・雇用保険の加入手続き(入社日から) 7 外国人雇用状況の届出(ハローワークへ雇用翌月末まで)届出ページ↗ 採用後の継続管理 雇用継続・ビザ更新のために 8 毎月の労働時間・残業代を記録・管理(タイムカード等) 9 改善基準告示(拘束時間・休息期間)への適合を定期確認 10 在留期限の管理とビザ更新(登録支援機関との連携) 特ドラWORKS編集部作成。各省庁の最新情報を定期的に確認してください。

労働条件通知書は「多言語版」を活用する


厚生労働省は、外国人労働者向けに英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語・タイ語など多言語のモデル労働条件通知書を無料で提供しています。書面を渡すだけでなく、内容を口頭でしっかり説明し、理解を確認することが重要です。理解確認を怠った場合、「知らなかった」というトラブルの原因になります。


✅ 登録支援機関への委託という選択肢


特定技能1号の外国人には、10項目の生活支援義務が発生します。運送実務で多忙な場合は、登録支援機関(特ドラWORKSのような専門機関)に支援業務を委託することで、法的義務を確実に履行しながら採用後の定着率も高められます。支援委託は法令上認められた方法です。



📌 まとめ:外国人ドライバーと労働基準法の7つのポイント 労働基準法は国籍を問わず完全適用される。外国人だから安くていい、は違法(第3条)。 改善基準告示(2024年4月改正)は外国人ドライバーにも適用。年3,300時間・月284時間・休息11時間以上が基本ルール。 時間外労働は年960時間が上限(特別条項付き36協定でも)。36協定の締結・届出は採用前に必須。 同一労働同一賃金の原則により、日本人ドライバーと同等以上の賃金設定が必要。最低賃金ギリギリでは申請が不許可になるリスクがある。 特定技能の受入要件そのものに労基法遵守が組み込まれており、違反があればビザ申請・更新ができなくなる。 特定技能事業場の76.4%で法令違反が確認されている。「うちは大丈夫」という過信が最大のリスク。 採用前・採用時・採用後の3フェーズでチェックリストを使い、継続的な労務管理体制を構築する。

外国人ドライバーの採用は、人手不足が深刻化する運送業にとって有力な解決策です。しかし、労働基準法をはじめとする法令を正しく理解し、適切な労務管理体制を整えることが、長期的な採用成功の前提条件です。

特ドラWORKSでは、特定技能ドライバーの採用支援から、受入後の労務管理サポートまでを一貫して提供しています。「何から始めればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。



コメント


  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
bottom of page