技能実習 vs 特定技能 vs 直接雇用―外国人ドライバー採用はどの制度を選ぶべき?
- 高橋 壮
- 11月13日
- 読了時間: 14分

目次:
1.外国人ドライバー採用の3つの選択肢
「外国人ドライバーを採用したいけど、どの制度を使えばいいのかわからない」――運送会社の経営者や人事担当者から、このような相談をよく受けます。
外国人を雇用する方法は一つではありません。主に3つの選択肢があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが大きく異なります。制度選びを間違えると、時間とコストを無駄にするだけでなく、法律違反になるリスクもあります。
この記事では、外国人ドライバー採用における3つの主要な選択肢を徹底比較し、あなたの会社に最適な方法を見つけるお手伝いをします。
この記事で比較する3つの選択肢:
技能実習制度(ただし、2024年12月時点で自動車運送業は対象外)
特定技能制度(2024年12月から本格運用開始)
身分系在留資格による直接雇用(永住者、定住者、日本人配偶者等)
それぞれの制度の仕組み、メリット・デメリット、コスト、向いている企業を詳しく解説した上で、ケース別のおすすめ診断もご紹介します。
この記事を読めば、あなたの会社にとって最適な選択肢が明確になります。
2.【選択肢1】技能実習制度

概要と仕組み
技能実習制度は、開発途上国の人材を日本に受け入れ、実習を通じて技能を習得してもらい、母国の経済発展に貢献してもらうことを目的とした制度です。1993年に創設され、製造業、建設業、農業、介護など幅広い分野で活用されてきました。
基本的な仕組み:
受入期間:最長5年間(技能実習1号で1年、2号で2年、3号で2年)
受入方法:監理団体を通じた団体監理型が一般的
転職:原則として認められない(同一実習実施者での継続が前提)
目的:技能移転による国際貢献(人手不足解消は建前上の目的ではない)
重要:自動車運送業は技能実習の対象外
ここで最も重要なポイントをお伝えします。
2024年12月時点で、自動車運送業(トラック、タクシー、バス)は技能実習制度の対象職種に含まれていません。 つまり、運送業では技能実習生を受け入れることができません。
対象外の理由:
運転業務は安全性が最優先であり、実習による技能習得という枠組みに馴染まない
事業用自動車の運転には専門的な資格(第一種・第二種運転免許)が必要
技能移転という制度趣旨と実態が合致しにくい
したがって、運送業で外国人ドライバーを採用したい場合、技能実習制度は選択肢から除外されます。
参考:他業種での技能実習制度(比較のため)
運送業では使えませんが、他業種での技能実習制度を理解しておくことは、特定技能制度との違いを知る上で参考になります。
メリット(他業種の場合):
監理団体のサポートがあり、初めてでも受け入れやすい
日本語教育や生活支援の仕組みが整っている
送り出し機関経由で候補者を選定できる
デメリット(他業種の場合):
転職が原則不可のため、人材の定着に不安がある場合も拘束力がある反面、本人の意思を尊重しにくい
「技能移転」という建前と「労働力確保」という実態のギャップ
監理団体への費用負担(月額数万円)
受入人数に制限がある(常勤職員の人数による)
運送業の結論:技能実習制度は利用不可
繰り返しになりますが、運送業では技能実習制度を利用できません。外国人ドライバーを採用したい場合は、次にご紹介する「特定技能制度」または「身分系在留資格」を選ぶ必要があります。
3.【選択肢2】特定技能制度

概要と仕組み
特定技能制度は、2019年4月に創設された比較的新しい在留資格です。人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることを目的としています。
そして、2024年3月に自動車運送業が対象分野に追加され、同年12月から本格運用が開始されました。 運送業にとっては、待望の外国人材受入制度と言えます。
基本的な仕組み:
在留期間:特定技能1号は通算で最長5年間
業務区分:トラック運転者、タクシー運転者、バス運転者の3区分
転職:同一分野内であれば可能
目的:人手不足の解消(明確に労働力確保が目的)
家族帯同:特定技能1号は原則不可(将来的に特定技能2号が導入されれば可能に)
メリット
①即戦力として期待できる
特定技能評価試験と日本語試験に合格した人材
一定の技能と日本語能力を持っている
来日前に母国で運転経験がある人材が多い
②最長5年間の雇用が可能
中長期的な人材育成が可能
頻繁な採用活動が不要
安定的な人員確保が実現
③転職が可能(柔軟性がある)
本人の意思を尊重できる
待遇が良ければ定着する仕組み
企業側も「選ばれる会社」になる努力が必要
④制度が明確
法律で要件が明確に定められている
人手不足解消が目的なので、建前と実態のギャップがない
行政の支援も受けやすい
⑤運送業に特化した制度設計
自動車運送業のニーズに合わせた制度
運転免許取得支援の仕組みも整備
業界団体(協議会)のサポートがある
デメリット
①初期投資が必要
人材紹介手数料、在留資格申請費用、免許取得費用など
総額で100万円〜200万円程度の初期投資
ただし、助成金を活用できる場合もある
②運転免許取得に時間がかかる
海外在住者の場合、来日後に日本の免許を取得(最長6ヶ月〜1年)
その期間は特定活動55号の在留資格で滞在
業務開始までに6〜12ヶ月かかる
③支援義務がある
支援計画の策定と実施が義務
生活支援、日本語教育、相談対応など
登録支援機関に委託することも可能(月2〜4万円程度)
④手続きが複雑
在留資格申請の書類が多い
協議会への加入義務
行政書士などの専門家のサポートが推奨される
コスト・期間
初期費用の目安:
人材紹介手数料:30万円〜80万円
在留資格申請費用:10万円〜30万円
運転免許取得費用:10万円〜30万円
研修費用:10万円〜20万円
住居準備費用:20万円〜50万円
総額:100万円〜200万円程度
継続費用の目安:
登録支援機関委託費用:月2万円〜4万円
日本語教育費用:月1万円〜3万円程度
採用から業務開始までの期間:
海外在住者(免許なし):6〜12ヶ月
国内在住者(免許あり):3〜6ヶ月
💡 参考記事特定技能ドライバーの採用プロセスや免許取得の詳細については、外国人ドライバーの免許取得までの流れで解説しています。
向いている企業
特定技能制度は、以下のような企業に特におすすめです:
✅ 人手不足が深刻で、早急に解決したい企業
✅ 中長期的な人材育成を考えている企業
✅ 初めて外国人材を受け入れる企業(専門家のサポートを活用できる)
✅ 若手戦力を確保したい企業
✅ 業績を拡大したい企業
運送業で外国人ドライバーを採用するなら、現時点では特定技能制度が最も有力な選択肢です。
4.【選択肢3】身分系在留資格(永住者、定住者、日本人配偶者等)

概要と仕組み
身分系在留資格とは、日本での活動内容に制限がない在留資格のことです。具体的には、以下のような在留資格が該当します。
主な身分系在留資格:
永住者:日本に永住を許可された外国人
定住者:日系人、難民認定者、日本人の配偶者との離婚後も日本に滞在が認められた者など
日本人の配偶者等:日本人と結婚している外国人、日本人の子
永住者の配偶者等:永住者と結婚している外国人、永住者の子
これらの在留資格を持つ外国人は、就労制限がなく、どんな仕事にも就くことができます。 つまり、日本人を雇用するのと同じ感覚で雇用できます。
メリット
①就労制限がない
業種、職種、勤務時間などに一切制限がない
日本人と全く同じ扱いで雇用できる
在留資格の変更申請などの手続きが不要
②転職・退職が自由
本人の意思で自由に転職・退職できる
企業側も、日本人を雇うのと同じ感覚
③長期雇用が可能
在留期間の制限がない(永住者)または長期間の在留が認められている
安定的な雇用が実現
④家族も制限なく就労可能
配偶者や子供も同じ身分系在留資格を持つことが多い
家族ぐるみで日本に定着している
⑤手続きが簡単
在留資格申請などの複雑な手続きが不要
日本人を雇用するのとほぼ同じプロセス
支援計画の策定義務などもない
⑥初期費用が安い
在留資格関連の費用がかからない
通常の採用費用のみ
デメリット
①候補者の数が限られる
身分系在留資格を持つ外国人の絶対数が少ない
特に、運転免許を持っている人材となるとさらに限定的
求人を出しても応募が来ない可能性が高い
②日本語能力にばらつきがある
日本での生活が長い人もいれば、まだ慣れていない人もいる
個別に日本語能力を確認する必要がある
③運転免許を持っていない場合がある
日本の運転免許を持っていない場合、取得に時間とコストがかかる
特に第二種運転免許(タクシー・バス)は取得のハードルが高い
④定着率は本人次第
就労制限がないため、いつでも転職できる
待遇や職場環境が悪ければ、すぐに辞める可能性がある
日本人と同じく、定着は企業努力次第
コスト・期間
初期費用の目安:
求人広告費:数万円〜数十万円
運転免許がない場合の取得費用:20万円〜40万円(教習所)
総額:10万円〜50万円程度(特定技能より大幅に安い)
継続費用:
特になし(日本人と同じ)
採用から業務開始までの期間:
免許保有者:1〜2ヶ月程度
免許なしの場合:3〜6ヶ月程度
向いている企業
身分系在留資格を持つ外国人の採用は、以下のような企業に向いています:
✅ 国内在住者をすぐに採用したい企業
✅ 初期費用を抑えたい企業
✅ 手続きを簡素化したい企業
✅ 日本語能力が高い人材を優先したい企業
✅ 既に身分系在留資格を持つ候補者と接点がある企業
ただし、候補者の数が限られているため、安定的に人材を確保するのは難しいという点は理解しておく必要があります。
5.3つの制度を徹底比較

ここまでの内容を、わかりやすく比較表にまとめました。
項目 | 技能実習 | 特定技能 | 身分系在留資格 |
運送業での利用 | ❌ 不可(対象外) | ⭕ 可能 | ⭕ 可能 |
在留期間 | 最長5年 | 最長5年(1号) | 制限なし(永住者) |
転職 | ❌ 原則不可 | ⭕ 可(同一分野内) | ⭕ 自由 |
就労制限 | 実習計画の範囲内 | 自動車運送業のみ | ❌ なし |
日本語要件 | なし(入国時) | N4以上 | なし(個別に確認) |
運転免許 | - | 必須(取得支援あり) | 必須(個別取得) |
初期費用 | - | 100〜200万円 | 10〜50万円 |
継続費用 | - | 月2〜4万円程度 | なし |
支援義務 | - | ⭕ あり | ❌ なし |
候補者の数 | - | 多い | 少ない |
採用難易度 | - | 中(専門家活用で容易) | 高(人材が少ない) |
手続きの複雑さ | - | やや複雑 | 簡単 |
家族帯同 | - | ❌ 不可(1号) | ⭕ 可能 |
向いている企業 | 運送業は利用不可 | 人手不足を解決したい企業 | 国内人材をすぐ採用したい企業 |
比較のポイント
①運送業で使えるのは「特定技能」と「身分系在留資格」のみ
技能実習は対象外なので、選択肢から除外されます。
②人材の確保しやすさは「特定技能」が圧倒的
身分系在留資格を持つ外国人は限られており、かつ運転免許を持っている人となるとさらに少数です。一方、特定技能は海外から人材を呼び寄せることができ、候補者のプールが大きいです。
③初期費用は「身分系在留資格」が安いが、安定供給は難しい
初期費用を抑えたいなら身分系在留資格が有利ですが、継続的に人材を確保するのは困難です。
④中長期的な人材戦略なら「特定技能」が最適
計画的に人材を確保し、育成していくなら、特定技能制度が最も適しています。
💡 参考記事特定技能ドライバーの成功事例については、特ドラワークス公式ブログで詳しくご紹介しています。
6.ケース別おすすめ診断

あなたの会社の状況に応じて、最適な選択肢は異なります。ケース別におすすめの制度をご紹介します。
ケース①:「今すぐ人手が必要!」
おすすめ:特定技能制度(国内在住者を優先)
既に日本にいて、日本の運転免許を持っている特定技能候補者を採用すれば、3〜6ヶ月で業務開始できます。人材紹介会社に「国内在住、免許保有者優先」と伝えましょう。
次点:身分系在留資格
もし、身分系在留資格を持ち、運転免許も持っている候補者と出会えれば、最も早く採用できます。ただし、そのような人材は希少です。
ケース②:「長期雇用したい」
おすすめ:特定技能制度+永住権取得サポート
特定技能1号で5年間働いた後、一定の要件を満たせば永住権の申請が可能になります。「長く働いてもらいたい」という意思を伝え、永住権取得に向けたサポートを約束することで、優秀な人材の定着が期待できます。
将来的に特定技能2号が導入されれば、在留期間の制限なく雇用できるようになります。
ケース③:「国内在住者を採用したい」
おすすめ:身分系在留資格 + 特定技能(国内在住者)
国内在住者であれば、身分系在留資格を持つ人材と、特定技能(国内で在留資格変更する人)の両方を候補として探しましょう。身分系在留資格の方が手続きは簡単ですが、人数が限られるため、特定技能も並行して検討するのが現実的です。
ケース④:「初めての外国人採用で不安」
おすすめ:特定技能制度(専門家のサポート活用)
初めての外国人採用なら、専門の人材紹介会社(特ドラワークスなど)のサポートを受けながら、特定技能制度を活用するのが最も安全です。採用から定着まで一貫してサポートしてもらえるため、失敗のリスクを最小限に抑えられます。
身分系在留資格の採用は手続きが簡単ですが、候補者探しから面接、採用後のフォローまで、すべて自社で行う必要があります。
ケース⑤:「コストを抑えたい」
おすすめ:身分系在留資格(ただし安定供給は困難)
初期費用を最小限に抑えたいなら、身分系在留資格を持つ人材を直接募集する方法があります。ただし、前述のとおり候補者の数が限られているため、安定的に人材を確保するのは難しいです。
長期的には、特定技能制度で計画的に採用する方が、結果的にコストパフォーマンスが高い場合が多いです。
ケース⑥:「インバウンド対応もしたい(タクシー・バス)」
おすすめ:特定技能制度(英語圏の人材)
フィリピンなど英語が堪能な国の人材を特定技能で採用すれば、ドライバー不足の解消とインバウンド対応の両方を実現できます。
💡 参考記事インドネシア人ドライバーをはじめとする外国人材の特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
7.まとめ:運送業なら特定技能が最適解

3つの選択肢を徹底比較してきましたが、結論としては、運送業で外国人ドライバーを採用するなら、特定技能制度が最も現実的で効果的な選択肢です。
特定技能制度が最適な理由
①運送業で使える唯一の本格的な制度
技能実習は対象外
身分系在留資格は人材数が限定的
特定技能は運送業のために作られた制度
②計画的な人材確保が可能
海外からの人材受入れで候補者が豊富
継続的に採用できる
人材紹介会社のネットワークを活用できる
③中長期的な雇用が実現
最長5年間の雇用
将来的には特定技能2号で永続的雇用も視野に
④専門家のサポートが充実
人材紹介会社が全面サポート
初めての企業でも安心
定着支援まで一貫して対応
⑤成功事例が増えている
既に多くの運送会社が採用に成功
ノウハウが蓄積されている
業界全体で受入体制が整いつつある
身分系在留資格も併用を検討
特定技能を主軸にしつつ、身分系在留資格を持つ優秀な人材と出会えた場合は、積極的に採用するという「ハイブリッド戦略」もおすすめです。
メイン:特定技能制度で計画的に採用
サブ:身分系在留資格を持つ人材も並行して探す
これにより、安定的な人材確保と、機会があればより低コストでの採用も実現できます。
次のステップ:まずは専門家に相談
「特定技能が良さそうだが、具体的にどう進めればいいかわからない」という方は、まず専門家に相談することをおすすめします。
トクドラワークスは、特定技能ドライバーの採用に特化した専門サービスです。あなたの会社の状況をお聞きし、最適なプランをご提案いたします。
トクドラワークスのサポート内容:
制度の詳しい説明と最適な選択肢のアドバイス
候補者の紹介とマッチング
在留資格申請の全面サポート
運転免許取得支援
研修・教育の実施
配属後の定着フォロー
💡 詳しい情報はこちら特定技能ドライバー採用の詳細、費用、成功事例などは、特ドラワークス公式ブログで随時更新しています。
無料相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
最後に:選択を間違えないために
外国人ドライバー採用は、会社の未来を左右する重要な決断です。制度選びを間違えると、時間とコストを無駄にするだけでなく、法律違反のリスクもあります。
この記事で押さえるべきポイント:
✅ 技能実習は運送業では使えない
✅ 特定技能が運送業にとって最も現実的な選択肢
✅ 身分系在留資格も併用を検討する価値あり
✅ 初めての場合は専門家のサポートを活用する
正しい制度を選び、適切なサポートを受ければ、外国人ドライバーの採用は決して難しくありません。
人手不足に悩む時代は終わりです。行動を起こす時代が始まっています。
あなたの会社に最適な選択肢で、人手不足を解決しましょう。
💡 お問い合わせはこちら
さらに詳しい情報や個別相談は、特ドラワークス公式ブログをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。




