ドライバーの労働時間は2026年にどう変わる?物流業界の課題と外国人材活用の可能性
- 高橋 壮
- 6 時間前
- 読了時間: 12分

目次:
物流業界における2024年問題に続き、2026年にはさらなる法規制の強化が予定されています。「2026年問題」と呼ばれるこの新たな課題は、ドライバーの労働時間規制の完全実施や、荷主に対する義務化など、物流業界全体に大きな影響を与えます。
人手不足が加速し、輸送能力の低下が危惧される中、運送会社や荷主企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。特に注目されているのが、特定技能外国人労働者の活用です。
本記事では、2026年問題の詳細とドライバーの労働時間への影響、そして外国人材の活用を含めた具体的な解決策について詳しく解説します。

1.ドライバーの労働時間は2026年にどう変わるか

運送業界における2026年問題とは?
運送業界における「2026年問題」とは、2024年4月から段階的に適用されてきた「働き方改革関連法」に基づくドライバーの時間外労働規制が、2026年4月以降に完全実施されることで生じる一連の課題を指します。具体的には、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に厳格に制限され、違反した企業には罰則が科されるようになります。
これまでは猶予期間や経過措置がありましたが、2026年以降は例外なく適用されます。これにより、長距離輸送や長時間拘束が常態化していた業務モデルが維持できなくなり、多くの運送会社が運行計画の抜本的な見直しを迫られています。
特に、長距離ドライバーの確保が困難になり、これまで翌日配送が可能だったエリアへの配送が2日以上かかるようになるなど、サービスレベルの低下も懸念されています。
さらに、2026年からは「改善基準告示」の改正内容も本格的に運用され、拘束時間や休息期間の基準がより厳しくなります。これにより、1人のドライバーが稼働できる時間が物理的に減少し、実質的な輸送能力が大幅に低下することが確実視されています。
2026年問題とは
2026年問題の本質は、単なる「労働時間の短縮」にとどまりません。これは、日本の物流システム全体が直面する構造的な危機です。ドライバーの労働時間が短くなることで、これまで通りの物量を運ぶことができなくなり、「モノが運べない」という事態が現実味を帯びてきます。
背景には深刻なドライバー不足があります。厚生労働省や国土交通省のデータによると、2024年時点ですでに約14万人のドライバーが不足していると推計されていますが、このまま対策を講じなければ、2030年には約28万人のドライバーが不足すると予測されています。これは、現在の輸送需要に対して圧倒的に供給が足りない状況を意味します。
また、ドライバーの高齢化も深刻です。トラックドライバーの平均年齢は全産業平均よりも高く、若手人材の流入が少ないため、定年退職による自然減が加速しています。2026年問題は、こうした慢性的な人手不足と法規制の強化が同時に押し寄せることで、物流網が寸断されるリスクを孕んでいるのです。
物流2026年問題
物流2026年問題が社会に与える影響は計り知れません。輸送能力の低下は、企業のサプライチェーンに直結します。例えば、製造業では部品の納入遅れによる生産停止、小売業では商品の欠品や配送遅延が発生する可能性があります。
さらに、需給バランスの崩壊により、運賃の高騰が避けられません。専門家の試算では、運賃が20〜30%程度上昇する可能性も指摘されています。これは最終的に商品価格への転嫁につながり、一般消費者の生活コスト増大を招くことになります。特に、利用が拡大しているEC(電子商取引)分野では、即日配送や送料無料といったサービスの維持が困難になるでしょう。
政府の試算によると、何の対策も講じなかった場合、2030年には全国で約34%の輸送能力が不足するとされています。これは、今の荷物の3個に1個が運べなくなる計算です。物流2026年問題は、一企業の課題を超えて、日本経済全体のアキレス腱となりつつあるのです。

2.ドライバーの労働時間と2026年物流法改正

2026年の物流法改正
2026年に向けて施行される物流関連法の改正は、これまでの「運送会社への規制」から「荷主への責任及及」へと大きく舵を切るものです。従来、長時間労働の原因となる長時間の荷待ちや附帯作業の強要は、運送会社側の努力だけでは解決できない問題でした。しかし、立場が強い荷主に対して改善を求めることは難しく、ドライバーの負担軽減は進んでいませんでした。
今回の法改正では、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)」と「貨物自動車運送事業法」が改正され、荷主企業に対しても物流効率化への取り組みが法的に義務付けられます。これは、物流を持続可能なものにするためには、発荷主・着荷主を含めたサプライチェーン全体での協力が不可欠であるという認識に基づくものです。
具体的には、荷主には「物流統括管理者(CLO)」の選任や、物流改善に向けた中長期計画の策定が求められるようになります。これにより、物流部門だけでなく経営層が関与する形での改革が促されることになります。
物流改正法は2026年にどう変わる?
物流改正法により、2026年からは規制の実行力が強化されます。特に重要なのが、一定規模以上の事業者に対する「判断基準」の策定と遵守義務です。国は、荷主や物流事業者が取り組むべき事項を明確にした判断基準を示し、企業はそれに沿った対策を講じる必要があります。
例えば、トラックの荷待ち時間を短縮するための予約受付システムの導入や、パレット活用の推進による荷役時間の削減などが具体的な取り組みとして挙げられます。また、運送契約の書面化も義務付けられ、口頭での曖昧な契約によるトラブルや、不当な運送条件の押し付けを防止する仕組みが整備されます。
さらに、法改正の実効性を担保するため、違反した事業者に対する罰則規定も設けられています。取り組みが不十分な企業に対しては、国からの「勧告」が行われ、それに従わない場合は社名が「公表」されます。さらに悪質な場合には「命令」が出され、最大で50万円以下の罰金が科される可能性があります。企業にとって、コンプライアンス違反による社会的信用の失墜は大きなリスクとなるため、真剣な対応が求められます。
2026年問題の特定荷主
改正法の中で特に注目すべきなのが「特定荷主」の指定です。特定荷主とは、年間の取扱貨物量が一定以上(例:9万トン以上など、政令で定める基準)の大手荷主企業を指します。製造業、卸売業、小売業など幅広い業種が対象となり、全国で約3,000社以上が該当すると見込まれています。
特定荷主に指定された企業には、以下の3つの義務が課されます。
項目 | 内容 |
物流統括管理者(CLO)の選任 | 役員クラスから物流全体を統括する責任者を選任し、経営視点で物流管理を行う。 |
中長期計画の策定 | 物流効率化に向けた具体的目標と実行計画(例:5カ年計画)を作成し、国に提出する。 |
定期報告 | 計画の進捗状況や荷待ち時間・積載率などの実績データを定期的に国へ報告する。 |
これにより、特定荷主は自社の物流プロセスを可視化し、効率化に向けたPDCAサイクルを回すことが義務付けられます。もはや物流は「コストセンター」ではなく、経営戦略上の重要課題として扱わなければなりません。
3.ドライバーの労働時間基準と2026年の変化

改正前後の労働時間基準の比較

ドライバーの労働時間(1日)
2026年に向けて強化される基準では、ドライバーの1日の拘束時間(始業から終業までの時間)が厳しく管理されます。原則として1日の拘束時間は13時間以内とされ、延長する場合でも最大15時間まで(週2回まで)に制限されます。これまでの基準では最大16時間まで認められていたため、実質的に1時間短縮されることになります。
この「1時間」の短縮は、現場の運行管理に大きな影響を与えます。例えば、片道4時間の配送ルートで往復する場合、これまでは荷積み・荷下ろしや休憩時間を挟んでも余裕がありましたが、改正後はギリギリのスケジュールになります。渋滞や納品先での待機時間が発生すれば、即座に基準違反となるリスクが高まります。
また、運転時間自体も「2日平均で1日9時間以内、週44時間以内」という制限があります。連続運転時間も「4時間ごとに30分以上の休憩」が必須です。これらのルールを遵守しながら効率的な配送を行うには、緻密な運行計画とリアルタイムな労務管理が不可欠となります。
2026年にインターバルが11時間になる理由
「勤務間インターバル」とは、1日の勤務終了後から翌日の始業までに確保しなければならない休息時間のことです。改正後の基準では、このインターバルを「継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないこと」と定めています。
従来の「継続8時間以上」から実質的に延長された背景には、ドライバーの過労防止と健康確保、そして事故防止の目的があります。睡眠不足や疲労の蓄積は、重大な交通事故に直結します。十分な休息時間を確保することで、ドライバーが万全の状態で業務に従事できる環境を整える狙いがあります。
実務的には、インターバルが11時間(最低9時間)必要ということは、1日の拘束時間が最大でも13時間(最大15時間)に制限されることを意味します。「拘束時間+休息期間=24時間」という原則があるためです。これにより、深夜まで及ぶ長時間残業や、早朝からの過密なシフトを組むことが物理的に不可能になり、労働環境の健全化が進む一方で、柔軟な配車が難しくなるという側面もあります。
4.ドライバーの労働時間に関わる待機時間義務化

トラックの待機時間義務化はいつから
トラックドライバーの長時間労働の最大の要因と言われる「荷待ち時間(待機時間)」についても、規制が強化されています。改正物流法に関連するガイドラインでは、発荷主・着荷主に対して荷待ち時間の短縮に努めることが明記され、実質的な義務化が進んでいます。
国土交通省の調査(2023年)によると、トラックドライバーの1運行あたりの平均荷待ち時間は約1時間47分にも及びます。中には3〜4時間待たされるケースも珍しくありません。この時間は労働時間(拘束時間)に含まれるため、待機時間が長引けば、その分だけ運転時間が削られ、輸送効率が低下します。
待機時間の削減義務は、2024年の法改正施行と同時にスタートしていますが、2026年に向けてその監視と指導が強化されます。特に特定荷主に対しては、待機時間の実態を把握し、削減に向けた計画を立てて実行することが求められます。
荷待ち・荷役作業時間の2時間以内ルール
政府は「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」において、「荷待ち時間と荷役作業時間を合わせて2時間以内とする」という具体的な目標ルール(通称:2時間ルール)を掲げています。
これは、荷積み・荷下ろしにかかる作業時間と、その前後の待機時間の合計を2時間以内に収めるよう努力しなければならないというものです。もし2時間を超える場合は、その正当な理由や改善策を検討する必要があります。
このルールの遵守状況は、トラックGメン(厚生労働省の特別チーム)や国土交通省によってモニタリングされます。恒常的に2時間を超える荷待ちを発生させている荷主企業に対しては、改善要請や勧告が行われ、場合によっては企業名が公表される措置も取られます。荷主企業にとっては、レピュテーションリスクを避けるためにも、待機時間削減は急務となっています。
1運行2時間ルール
「1運行2時間ルール」は、ドライバーの1回の運行サイクルの中で、荷扱いに関わる非運転時間を2時間以内に抑えるという考え方です。これにより、ドライバーの拘束時間を短縮し、本来の業務である「運転」に集中できる時間を確保することを目指しています。
このルールを実現するために有効なのが「トラック予約受付システム」の導入です。事前に搬入・搬出時間を予約制にすることで、トラックが特定の時間に集中することを防ぎ、スムーズな荷役作業を可能にします。実際にシステムを導入したB物流の事例では、平均1時間47分だった待機時間が45分まで短縮され、ドライバーの回転率が向上したという成果も報告されています。
また、パレット輸送の推進や、手積み手下ろし(バラ積み)の廃止も重要です。機械荷役を導入することで作業時間を大幅に短縮でき、ドライバーの身体的負担も軽減されます。
5.ドライバーの労働時間2026年問題への対策

外国人ドライバー活用の重要性
労働時間の短縮によって不足する輸送能力を補うためには、新たな労働力の確保が不可欠です。そこで大きな期待が寄せられているのが、「特定技能」制度を活用した外国人ドライバーの採用です。

特定技能「自動車運送業」のポイント:
制度開始:2024年12月から運用が開始され、トラック、バス、タクシー分野での受け入れが可能になりました。
要件:日本語能力試験N4以上、自動車運送業分野特定技能評価試験の合格が必要です。運転免許については、日本国内で第一種運転免許を取得する必要があります。
メリット:
項目 | 内容 |
若手人材の確保 | 特定技能人材は20〜30代が中心であり、高齢化が進む業界の若返りに寄与する。 |
高い意欲 | 日本で技術習得や収入向上を目指す強い意欲を持ち、モチベーションの高い人材が多い。 |
長期就労 | 特定技能1号で最長5年、2号へ移行すれば事実上の無期限就労が可能で、将来の幹部候補として期待できる。 |
受け入れ企業には、適切な支援計画の策定と実施が義務付けられています。登録支援機関と連携し、入国前の手続きから入社後の生活支援まで、きめ細かなサポート体制を整えることが成功の鍵です。採用プロセスには通常3〜4ヶ月程度かかるため、早めの準備が必要です。
荷主と運送会社の連携強化
2026年問題を乗り越えるためには、荷主と運送会社が対等なパートナーとして協力し合う関係が不可欠です。「運賃を上げるから何とかしてくれ」というだけでは解決しません。業務プロセスそのものを見直す必要があります。


6.まとめ

2026年は物流業界にとって大きな転換点となります。ドライバーの労働時間規制の完全実施は避けられない未来であり、これまでのやり方を続けていては事業の継続が危ぶまれます。しかし、これを「ピンチ」ではなく「変革のチャンス」と捉えることで、新たな競争優位性を築くことができます。
特に、外国人ドライバーの活用は、人手不足解消の切り札となるだけでなく、組織の活性化や多様性の推進にもつながる有効な戦略です。特定技能制度の要件緩和や支援体制の充実により、導入のハードルは下がっています。





