物流の外国人採用完全ガイド|特定技能制度から定着支援まで徹底解説
- 10 時間前
- 読了時間: 10分

目次:

1.物流の外国人採用が進む背景

日本の物流業界は今、かつてない人手不足の危機に直面しています。EC市場の急拡大により配送需要は年々増加する一方、ドライバーの高齢化と若手の担い手不足が深刻化しています。こうした状況下で、外国人材の活用が物流業界の持続可能性を支える重要な選択肢として注目を集めています。
2024年問題による人手不足
2024年4月から施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限規制が適用されました。これがいわゆる「2024年問題」です。これまで長時間労働に依存していた物流業界にとって、この規制は業務運営に大きな影響を与えています。

国土交通省の試算によれば、2024年度には輸送能力が約14.2%不足し、2030年度には約34.1%もの輸送力が失われると予測されています。
これは単なる数値ではなく、私たちの日常生活に直結する深刻な問題です。荷物が届かない、配送が遅れる、物流コストが上昇する――こうした影響が現実のものとなりつつあります。

外国人材の需要が高まる理由
こうした危機的状況を打開する切り札として、外国人材の活用が急速に進んでいます。その背景には、単なる人数の補填以上の戦略的な意義があります。
観点 | 内容 |
若手労働力の確保 | 日本の物流業界は高齢化が進む一方、外国人材は20〜30代が中心で、体力・意欲面から長期的戦力として期待でき、業界活性化につながる。 |
即戦力としての活用 | 特定技能制度により一定の技能・日本語力を持つ人材を受け入れ可能。母国での運転経験者は研修や免許取得支援により短期間で戦力化できる。 |
多様性による組織力向上 | 外国人材が新たな視点や価値観をもたらし、業務プロセス見直しの契機となって、効率化や安全性向上につながる。 |

2.物流の外国人採用で必要な在留資格

外国人が日本で物流業務に従事するためには、適切な在留資格が必要です。2024年に新設された「特定技能(自動車運送業)」を中心に、物流業界で活用できる主な在留資格について解説します。
特定技能「自動車運送業」の概要
2024年3月に新設された特定技能「自動車運送業」は、物流業界の人手不足解消を目的とした在留資格です。この制度により、トラックドライバーやバス・タクシー運転手として外国人材を正式に雇用できるようになりました。

特定技能1号では、トラック運転手(貨物自動車運送業)とバス・タクシー運転手(旅客自動車運送業)の2つの業務区分があります。多くの物流事業者が関心を持つのはトラック運転手の区分で、普通免許から大型免許まで、業務内容に応じた免許区分での雇用が可能です。
特定技能「自動車運送業」で従事できる業務

倉庫業務で活用できる在留資格
運転業務を伴わない倉庫作業については、2027年から新たに「物流倉庫」分野が特定技能の対象として追加される予定です。これにより、倉庫内でのピッキング、梱包、仕分け、フォークリフト作業などに従事する外国人材の受け入れが可能になります。
現時点(2026年2月)では、倉庫業務に従事する外国人材を雇用する場合、以下の在留資格を活用することになります。

特に注目すべきは、運転業務と倉庫業務を組み合わせた複合的な業務形態です。特定技能「自動車運送業」では、運転業務に付随する荷物の積み降ろしや倉庫内作業も認められているため、実際の物流現場のニーズに即した柔軟な人材活用が可能です。
3.物流の外国人採用に必要な要件

特定技能外国人を受け入れるためには、企業側と外国人側の双方が満たすべき要件があります。特に企業側の要件は複数あり、計画的な準備が必要です。
Gマーク取得と協議会加入

特定技能「自動車運送業」で外国人材を受け入れる企業は、「Gマーク(安全性優良事業所認定)」または「働きやすい職場認証制度」のいずれかを取得している必要があります。これは、外国人材が安全で働きやすい環境で就労できることを保証するための要件です。

多くの中小運送事業者にとっては、「働きやすい職場認証」の方が取得しやすい選択肢となっています。この認証は、労働時間の管理、有給休暇の取得促進、労働環境の改善などの取り組みを評価するもので、Gマークに比べて申請要件が明確で準備しやすいという特徴があります。

協議会への加入手続きは、全日本トラック協会のウェブサイトから届出書をダウンロードし、必要事項を記入して提出します。加入費用は無料ですが、提出書類の準備には時間がかかるため、採用計画の初期段階から準備を始めることが推奨されます。
日本語試験と技能試験の基準
特定技能外国人として働くためには、外国人自身が一定の日本語能力と業務に必要な技能を証明する必要があります。
日本語能力試験の要件

日本語能力N4レベルとは、「基本的な日本語を理解できる」レベルを指します。具体的には、日常的な場面で使われる基本的な語彙や漢字を使って書かれた文章を読んで理解でき、ゆっくり話される会話であれば内容がほぼ理解できる程度です。物流現場での安全確保や円滑な業務遂行のために、最低限必要な日本語力として設定されています。
技能試験の要件

技能試験は、日本国内だけでなく、ベトナムやフィリピンなどの海外でも実施されています。企業が海外から直接採用する場合、現地で試験を受けた合格者を選考することができます。試験の詳細や実施スケジュールは、ClassNKの公式サイトで確認できます。

運転免許取得と外免切替の注意点
特定技能外国人がトラックドライバーとして働くためには、日本の運転免許証が必要です。免許の取得方法は大きく分けて2つあります。
方法 | 内容 |
方法1:日本で新規取得 | 日本の自動車学校に通い、学科試験・技能試験に合格して免許を取得。普通免許は約1〜2か月、費用は約30万円。中型・大型免許はさらに時間・費用(約40〜50万円)が必要。企業が費用支援する場合もある。 |
方法2:外国免許切替(外免切替) | 母国の有効な免許を日本の免許に切替可能。対象国は限定され、2025年10月以降は制度が厳格化しているため注意が必要。 |

外免切替を利用する場合は、特定活動という在留資格で入国し、最長6か月の期間内に日本の運転免許を取得する必要があります。この期間中は運転業務には従事できないため、企業側は待機期間中の給与や生活支援について事前に計画しておく必要があります。

4.物流の外国人採用のメリットと課題

外国人材の採用は、物流業界に多くのメリットをもたらす一方で、克服すべき課題も存在します。成功させるためには、両面を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
人手不足解消と即戦力化
外国人採用の最大のメリットは、慢性的な人手不足の解消です。特に地方の中小運送事業者では、求人を出しても応募者が集まらないという状況が続いています。外国人材、特に東南アジア諸国からの人材は、日本での就労機会を強く希望しており、積極的に応募してくれます。

また、特定技能制度で受け入れる外国人は、既に一定の技能と日本語能力を持つ即戦力です。技能試験に合格し、日本語でのコミュニケーションができる人材であるため、適切なOJTと安全教育を実施すれば、比較的短期間で戦力として活躍できます。
さらに、外国人材の採用は職場の活性化にもつながります。異なる文化背景を持つメンバーが加わることで、これまで気づかなかった業務改善のアイデアが生まれたり、日本人従業員の意識改革につながったりするケースが多く報告されています。
特に、安全管理や5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底など、基本動作を見直す良い機会になると評価する企業も少なくありません。

言語や安全面の課題と対策
一方で、外国人採用には克服すべき課題も存在します。最も大きな課題は言語コミュニケーションです。
特定技能外国人は日本語能力N4レベル以上を持っていますが、これは日常会話の基礎レベルであり、専門用語や緊急時の指示を完璧に理解できるわけではありません。
特に物流現場では、「積載」「荷崩れ」「横持ち」「バース」といった業界特有の用語が頻繁に使われます。また、交通標識や配送指示書、デジタコ(デジタルタコグラフ)の操作説明など、読み書きが必要な場面も多くあります。
言語課題への対策

次に重要なのが安全管理です。物流業界は労働災害のリスクが高い業種であり、外国人材に対しても十分な安全教育が必須です。言語の壁があるからこそ、より丁寧で分かりやすい教育が求められます。
安全管理の強化策

さらに、生活面でのサポートも重要な課題です。外国人材が日本で安心して働き続けるためには、住居の確保、銀行口座の開設、携帯電話の契約、病院の受診など、生活全般にわたる支援が必要です。特定技能1号では、こうした生活支援を行うことが法律で義務付けられています。

5.物流の外国人採用を成功させる流れ

外国人材の採用から定着までは、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。ここでは、特定技能「自動車運送業」での採用を前提に、具体的な流れを解説します。
採用から在留資格取得まで



定着を支える研修と支援体制
外国人材を採用しても、すぐに辞めてしまっては意味がありません。長期的に活躍してもらうためには、継続的な研修と充実した支援体制が不可欠です。
入社時研修では、会社の理念や方針、日本の労働慣行、安全ルール、業務の流れを丁寧に説明します。特に重要なのは、「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」の文化です。日本の職場では当たり前のこの習慣も、文化背景が異なる外国人にとっては理解しにくい場合があります。
なぜ報告が重要なのか、どのタイミングで連絡すべきかを、具体例を示しながら教えることが大切です。

また、相談窓口の設置も定着率向上の重要な要素です。仕事の悩み、人間関係のストレス、生活上の困りごとを気軽に相談できる環境を整えましょう。理想的には、外国人の母国語で対応できる相談窓口があると安心感が高まります。登録支援機関の多くは、多言語での相談対応サービスを提供しています。
日本人従業員との交流促進も忘れてはいけません。食事会やレクリエーション活動を通じて、職場の一体感を醸成することが、外国人材の孤立を防ぎ、モチベーション維持につながります。また、外国人材の母国の文化や習慣を日本人従業員に紹介する機会を設けることで、相互理解が深まり、より良い職場環境が生まれます。

6.まとめ

物流業界における外国人採用は、2024年問題による深刻な人手不足を解決する有力な手段として、今後ますます重要性を増していきます。特定技能「自動車運送業」の新設により、法的にも環境が整い、大手企業だけでなく中小事業者でも外国人ドライバーの採用が現実的な選択肢となりました。
成功の鍵は、制度の正しい理解と計画的な準備にあります。GマークやSST認証の取得、協議会への加入、運転免許取得支援、生活サポート体制の整備――これらの要件を着実にクリアしていくことで、優秀な外国人材を獲得し、長期的に活躍してもらうことができます。
また、言語や文化の違いは課題であると同時に、組織に新たな視点と活力をもたらす機会でもあります。やさしい日本語の活用、視覚的なマニュアルの整備、充実した研修プログラムなど、外国人材を受け入れるために行う施策は、結果的に日本人従業員にとっても働きやすい環境づくりにつながります。
物流の現場で活躍する外国人ドライバーは、今後さらに増加していくでしょう。今こそ、外国人採用に向けた一歩を踏み出す絶好のタイミングです。この記事が、皆様の採用活動の一助となれば幸いです。








コメント