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特定技能ドライバーの離職理由とは?離職率・転職率と企業が取るべき定着対策を解説

  • 1 日前
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特定技能ドライバーの離職理由とは?離職率・転職率と企業が取るべき定着対策を解説

「せっかく採用した外国人ドライバーが早期に辞めてしまった」「定着率が上がらず、採用コストが回収できない」

——そんな悩みを抱える運送会社が増えています。


2024年3月に特定技能の対象分野に自動車運送業が追加され、外国人ドライバーの採用を本格的に検討する企業が急増しました。しかし、採用を始めた後に直面するのが「定着」の問題です。


特定技能外国人が離職する理由は、「日本人と働き方が合わない」といった曖昧なものではありません。労働条件・言語の壁・生活サポート・キャリア設計という具体的な課題が複合的に絡み合っています。本記事では、出入国在留管理庁の統計データをもとに離職の実態を把握し、企業が今すぐ実践できる定着対策を体系的に解説します。


1.特定技能ドライバーの離職を理解する前に知っておきたいこと


特定技能ドライバーの離職を理解する前に知っておきたいこと

外国人ドライバーの離職は、一つの原因だけで起きることはほとんどありません。複数の要因が積み重なることで「もう続けられない」という判断に至るケースがほとんどです。以下に、現場で特に多く見られる5つの離職理由を整理しました。


特定技能「自動車運送業」とは 2024年3月の閣議決定を経て、同年12月から本格運用が開始された特定技能の新分野です。トラック・バス・タクシーの3区分があり、それぞれ必要な運転免許・日本語レベル・研修要件が異なります。制度の詳細は特定技能ドライバーが運送業界を変える:人手不足解消への実践ガイドで解説しています。


「外国人はすぐ辞める」は正確ではない 「外国人労働者はすぐ辞める」という印象が一部で広まっていますが、出入国在留管理庁のデータでは特定技能全体の自己都合離職率は16.1%(2019年4月〜2022年11月の累計)です。日本人の新卒社員が3年以内に離職する割合が高卒で32.8%、大卒で25.0%(厚生労働省調査)であることと比較すると、特定技能人材の離職率は決して高い水準ではありません。問題は離職「率」より、なぜ離職が起きるかの「理由」と「背景」を把握することにあります。


2.特定技能ドライバーが離職する5つの主な理由


特定技能ドライバーが離職する5つの主な理由

外国人ドライバーの離職は、一つの原因だけで起きることはほとんどありません。複数の要因が積み重なることで「もう続けられない」という判断に至るケースがほとんどです。


以下に、現場で特に多く見られる5つの離職理由を整理しました。


① 労働条件・待遇への不満 最も多い離職理由が、来日前に聞いていた条件と実際の現場とのギャップです。「残業が少ない」と説明されていたのに恒常的な長時間労働が続く、「月給〇〇万円」と言われていたが各種控除後の手取りが想定を大幅に下回る——こうした期待と現実のズレは、企業への信頼を損なう直接的な原因になります。  特に母国で家族を養っている外国人ドライバーは収入への期待が大きく、給与水準だけでなく、残業代・手当の計算方法・控除の内訳についても事前に十分な説明が求められます。特定技能ドライバーの賃金設定と法的ルールも合わせてご確認ください。


② 言語・文化の壁によるストレス 特定技能の日本語基準(トラックはN4相当、バス・タクシーはN3以上)は、日常会話には対応できるレベルでも、業務上の専門用語・曖昧な指示・日本特有の「空気を読む」コミュニケーションへの対応は別の話です。  「報連相(ほうれんそう)」の文化、時間厳守に対する高い意識、謝罪の作法など、日本の職場では当たり前のことが、異文化背景を持つドライバーには戸惑いの連続となります。職場に相談できる相手がいない場合、孤立感が高まり離職の引き金になります。食事や礼拝など宗教・文化的配慮の不足も、モチベーション低下に直結します。
③ 生活面のサポート不足 外国人にとって日本での生活は、仕事よりも先に様々なハードルが待ち受けています。住居の賃貸契約(外国人不可の物件が多い)、銀行口座の開設、行政手続き(住民登録・健康保険・年金)、医療機関の利用など、すべての手続きが日本語で行われ、制度自体も複雑です。  「仕事は頑張れる。でも生活が不安すぎて集中できない」という状態が続くと、仕事へのパフォーマンスにも影響し、早期離職につながります。入社直後の生活基盤が整っているかどうかが、定着率を大きく左右します。物流業界で働く外国人のリアルもご参照ください。


④ キャリアアップを目的とした転職 特定技能人材の離職理由で見落とされがちなのが、積極的なキャリアアップ目的の転職です。特定技能制度は転職が認められており、外国人コミュニティやSNSを通じて求人情報が瞬時に共有されます。「同じ仕事内容なのに給与が月3万円高い」「リーダー候補として採用してくれる会社がある」といった情報が広まれば、条件の良い企業へ移ることは合理的な選択です。  昇給の仕組みや特定技能2号への移行支援など、「この会社で働き続けるメリット」を可視化できていない企業ほど、優秀な人材が流出しやすくなります。

⑤ 帰国・家族の事情 外国人労働者特有の離職理由として、母国の家族の事情による帰国があります。親族の病気・介護、子どもの教育、国内での就職機会の変化など、本人の意思だけで決められない事情が帰国を促すことがあります。  出入国在留管理庁のデータでは、自己都合退職後に帰国を選んだ人は31.4%と最多となっています。企業側にできることは限られますが、普段から本人の生活状況や家族への関心を持つコミュニケーションを取ることで、急な離職を事前に察知できる可能性が高まります。


3.特定技能の離職率・転職率データ(公式統計)


特定技能の離職率・転職率データ(公式統計)

「特定技能外国人は離職率が高い」という印象がある一方で、実際のデータはどうでしょうか。出入国在留管理庁が公表している統計をもとに、実態を正確に把握しましょう。


特定技能全体の自己都合離職率:16.1%


出入国在留管理庁の調査(2019年4月の制度施行〜2022年11月末)によると、特定技能外国人の自己都合による離職者数は1万9,899人であり、同期間の在留者数に対する割合は16.1%となっています。


日本人との離職率比較 厚生労働省の調査によると、日本人の新卒社員が3年以内に離職する割合は高卒32.8%、大卒25.0%(2022年3月卒業者)です。また、全産業の年間離職率は概ね15〜16%台で推移しています。特定技能人材の16.1%という数字は、決して突出して高い水準ではないことがわかります。

業種別離職率の比較(特定技能全体)


ただし、業種によって離職率には大きな差があります。自動車運送業は2024年12月に制度が本格運用開始となったばかりであり、現時点では業種単独のデータは公表されていません。参考として、他分野の離職率を確認しておきましょう。


特定技能 分野別 自己都合離職率(出入国在留管理庁データ)


自動車整備(8.9%)や航空(8.0%)など、専門性が高く就労環境が整いやすい職種では離職率が低い傾向にあります。自動車運送業も、適切な受け入れ体制と職場環境を整えることで、低い離職率を実現できる可能性があります。


自己都合退職後の「その後」


特定技能人材が自己都合で退職した後、どのような道を歩んでいるのでしょうか。「外国人が辞める=日本を去る」わけではありません。出入国在留管理庁のデータでは、退職後も日本国内で就労を続ける人が半数近くに達しています。



退職者の約45%が日本国内で就労を継続(特定技能での転職30.3%+別の在留資格へ変更15.1%)していることは、「日本で働き続けたい」という外国人材の意欲を示しています。

企業にとっては、離職した後も同業他社に転職される可能性があることを意味し、魅力的な労働条件と職場環境を整えることの重要性を改めて示しています。


自動車運送業の離職データについての注意点 特定技能「自動車運送業」分野は2024年12月に制度が本格運用開始されたばかりのため、現時点では同分野単独の離職率・転職率の統計データは公表されていません。本記事で紹介しているデータは、特定技能全体の統計です。今後、出入国在留管理庁から分野別データが発表され次第、内容を更新する予定です。最新情報は出入国在留管理庁の特定技能在留外国人数の公表ページでご確認ください。


4.トラックドライバー特有の離職課題


トラックドライバー特有の離職課題

特定技能ドライバーの離職を考えるうえで、運送業・物流業界の特殊な職場環境も理解しておく必要があります。厚生労働省の調査では、運輸業・郵便業の離職率は10.3%(2023年)と全産業平均(9.2%)よりやや高めに推移しています(2025年上半期 厚生労働省「雇用動向調査」)。


長時間労働・不規則な勤務 配送スケジュールや交通状況により、勤務時間が不規則になりやすい職種です。早朝出勤・深夜帰宅が続くと生活リズムが崩れ、精神的・身体的疲労が蓄積します。2024年問題以降、残業時間の上限規制(年960時間)が適用されましたが、現場での運用には個社差があります。  体力的な負担の大きさ 長距離運転に加え、荷物の積み下ろし作業が伴う場合、体力消耗は相当なものです。特に夏場の荷役作業、冷凍・冷蔵車での作業など過酷な環境での業務が続くと、慣れない外国人ドライバーには過大な負荷となることがあります。  一人作業による孤立感 トラックドライバーは業務の大半を一人で行うため、同僚や上司とのコミュニケーションが取りにくい環境です。悩みや不安を抱えていても相談できず、問題が深刻になってから発覚するケースも少なくありません。外国人ドライバーは言語の壁があるため、この孤立感がより強まりやすいといえます。  免許取得・維持のプレッシャー 特定技能ドライバーは、就労のために日本の運転免許(外国免許切替)が必要です。免許取得の過程での試験ストレスや、免許取得前に現場業務を担えないもどかしさが、離職の引き金になることがあります。外国免許切替の最新手続きは別記事で詳しく解説しています。

運送業だからこそ「定着」が重要な理由 採用・育成コスト(紹介手数料・研修費・免許取得支援費)が他業種より高額になりやすい 運転免許取得まで現場業務に就けない期間があり、初期投資が大きい ドライバー不足の深刻化(2029年度に約28.8万人不足と国土交通省が試算)で後任確保が困難 外国人ドライバーの転職は同業他社への転出が多く、業界全体の競争激化に直結する 定着した外国人ドライバーが「橋渡し役」となり、次の採用を呼び込む好循環が生まれる


5.企業が今すぐ実践できる定着対策5選


企業が今すぐ実践できる定着対策5選

離職の背景を理解したうえで、企業が具体的に何をすべきかを整理します。「外国人だから難しい」ではなく、「日本人にとっても当たり前の職場環境整備」がそのまま定着対策につながることがほとんどです。


対策① 採用前の「条件の透明化」 求人票・雇用契約書は母国語または多言語で提供する 月給だけでなく「手取り額の目安」も事前に説明する 残業の実態・休日の取りやすさ・荷役作業の有無を正直に伝える 面接時のすり合わせに通訳を活用し、認識のズレを防ぐ 対策② 入社直後の生活サポート体制 住居の準備(外国人入居可能な物件の事前確保) 住民登録・銀行口座・健康保険の手続きを企業が同行支援 多言語対応の緊急連絡先リストを作成・配布する 宗教・食習慣への配慮(ハラール食・礼拝スペース等) 対策③ メンター・バディ制度の導入 同国出身の先輩社員や多言語対応スタッフをメンターに配置 入社後3ヶ月は週1回以上の1on1面談を実施する LINEグループや多言語チャットで気軽に相談できる窓口を設ける 職場内の「孤立」を防ぐチームビルディングイベントを定期開催 対策④ キャリアパスの「見える化」 特定技能1号→特定技能2号への移行支援プランを明示する 昇給・昇格の評価基準を数値化して共有する 日本語能力向上への支援(費用補助・学習時間の確保) リーダー・サブリーダーへのステップアップ機会を用意する 対策⑤ 定期面談と早期課題検知の仕組み 最も重要かつ即効性が高い対策が、定期的な面談による「見えない不満の可視化」です。外国人ドライバーは職場での不満を直接言い出しにくい傾向があります。月1回の面談で「仕事の悩み」「生活の不安」「将来への希望」を整理し、問題が深刻になる前に対処することが重要です。  入社後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月のタイミングで必ず実施 面談は通訳を介して母国語でも実施できると効果的 「仕事満足度」「人間関係不安度」「生活満足度」を5段階で評価・記録する 支援機関(登録支援機関)と情報を共有し、企業だけで抱え込まない体制を構築する

定着に成功している企業の共通点 特定技能ドライバーの定着に成功している企業には、次の共通点があります。①採用前の説明が丁寧で誠実(給与・労働時間・業務内容のギャップがない)、②生活基盤の整備を会社がサポート(孤立させない仕組みがある)、③「頑張れば評価される」という実感が持てるキャリアパスがある、の3点です。外国人だから特別な対応が必要というよりも、「働く人として当たり前のことを丁寧にやっている」企業が選ばれています。

より具体的な採用から定着までの流れについては、物流の外国人採用完全ガイドで詳しく解説しています。また、採用できる外国人ドライバーの出身国別の特徴についてはフィリピン人特定技能ドライバー完全ガイドインドネシア人特定技能ドライバー完全ガイドもご参考ください。



6.まとめ


まとめ

この記事のポイント


  • 特定技能ドライバーの離職理由は「労働条件・言語・生活・キャリア・帰国」の5要因が複合的に絡み合っている


  • 特定技能全体の自己都合離職率は16.1%(出入国在留管理庁)で、日本人の3年以内離職率より低い


  • 自動車運送業は2024年12月運用開始の新分野のため、分野別データは今後の蓄積を待つ必要がある


  • 退職後も約45%が日本国内での就労を継続しており、外国人材の「働き続けたい」意欲は高い


  • 定着対策の核心は「採用前の透明な説明」「生活サポート」「メンター制度」「キャリアの可視化」「定期面談」の5つ


  • 外国人だからではなく「働く人として当たり前の環境整備」が定着率向上の本質


外国人ドライバーの定着は、企業の受け入れ体制の質によって大きく変わります。「外国人は難しい」ではなく、「どんな環境を整えれば長く働いてもらえるか」という視点で採用・定着を設計することが、これからの運送業には不可欠です。


人手不足が深刻化する運送業界で、特定技能外国人ドライバーの安定採用・定着を実現したい方は、まず物流業界の人手不足の実態運送業の人手不足データと原因もあわせてお読みください。



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